「ですから、私たちは勇気を失いません。たとい私たちの外なる人は衰えても、内なる人は日々新たにされています」(Ⅱコリント4:16)
「老年行動学」を研究している柏木哲夫医師は、「老い」は「その捉え方によっては、明るく、楽しいものになり得る」と前向きに老いを受け止めることを勧めています。
柏木医師は「ボケないための十カ条」を紹介しています。
1. くよくよ考えないこと
あまりくよくよ考え過ぎると、それによって心や体のエネルギーが使われてしまい、ボケやすくなるのかもしれない。世の中、なんとかなるさと気楽に構える方が良い。
2. 物事のプラス面を見ること
病気をすることは、必ずしも全面的にマイナスではない。病気を持つことによって生活全体が引き締まり、それが大きなプラスになることもある。
3. 楽しみを持つこと
自分が時を忘れて打ち込めるものや、楽しみや趣味を持つ人はボケにくい。
4. 役割意識を持つこと
家庭や社会において、自分の役割を持つことがボケ防止につながる。
5. 学ぶ姿勢
人の講演を聞き、学ぼうとする姿勢を持つ老人の目は、生き生きと輝いている。
6. 人との交わりを大切にする
自分の意見をはっきりと言い、人の話に謙虚に耳を傾けることが大切である。
7. 「年寄り気分」を排除すること
若い人の中に積極的に入って行き、少し頑張って行動することが大切である。
8. 体を動かすこと
適度な運動は脳循環を助け、ボケ防止につながる。
9. 歯をしっかり守ること
噛むという行為は、脳の血流を増やし、頭の働きを活発にする。歯が抜けたら、そのつど入れ歯をして、自分の歯と合わせていつも最低28本は保つことが大切である。
10. 体の病気に気を付ける
睡眠や食事に気を使い、病気になり難い生活をすることが大切である。
老いは成熟の時でもあります。目に見える身体機能は、確かに年齢とともに衰えていきますが、目に見えない精神機能、例えば結晶性知能(経験を生かして直面する問題を解決する能力)や、言語性知能は年齢とともに上昇します。つまり「人間は死ぬまで成長する存在」なのです。
また「老い」は死が近づくことですが、「死を意識すること」すらプラスに働くのです。
クリスチャンの作家で精神科医の加賀乙彦氏が、興味ある報告をしています。彼は刑務所で多くの受刑者と面接をし、終身刑の囚人は何となく元気がなく、ダラダラと毎日を送っているのに対して、死刑囚は元気でキビキビしていることに気付いたと言います。彼はこの差を、死をいつも意識しているかどうかによるとしています。
また「円熟度」も年齢とともに増していきます。円熟度は、人間関係の調整能力や怒りを抑えられるか、忍耐強く事の成り行きを見守ることができるかなどによって測れます。
目に見える身体機能の衰えにばかり目を向けないで、目に見えない精神機能や霊性機能を上昇させていくことに目を向けて生きるとき、老いもまた、神からの祝福として捉えることができるのです。
パウロも次のように言います。
「私たちは、見えるものにではなく、見えないものにこそ目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものはいつまでも続くからです」(Ⅱコリント4:18)
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