英政府が、身寄りのない難民の子どもたちのための再定住プログラムを3月で停止すると決定したことに対して、同国の教会指導者ら220人以上が、決定を取り消し、子どもたちの受け入れを継続するよう求める声明(英語)に署名した。教会指導者らは「難民の子どもたちにもう1度扉を開き、再定住できるように支援すること」を要求した。
英内務省は8日、身寄りのない難民の子どもたちへの支援や再定住について定めた「ダブズ改正条項」を、3月末で停止すると発表した。ダブズ改正条項は、労働党のアルフレッド・ダブズ上院議員(ダブズ卿)が改正案を提出し、昨年5月に成立していた英国の「2016年入管法」に対する改正条項。欧州内にいる身寄りのない未成年の難民を、英国内に親族がいるかどうかを問わず、引き取ることを定めている。
ロバート・グッドウィル移民担当相は、ダブズ改正条項によりこれまでに約200人の子どもたちを受け入れ、3月末までにさらに150人を受け入れる予定だと述べた。しかしグッドウィル氏は、地方自治体にはこれ以上受け入れる余地はないと語った。
この決定に対し、英国のキリスト教慈善団体「ホーム・フォー・グッド」は、政府に取り消しを求める声明を作成し、署名を募集。14日午後までに、教会指導者ら228人が署名した。
声明には、英国に来る難民の子どもの数は「期待されていたよりもはるかに少なく」、「(受け入れ打ち切りは)ダブズ改正条項の精神や意図とも合わず、身寄りがなく傷つきやすい多くの子どもたちを不適当な条件で欧州に取り残すことになります」と書かれている。
「より多くの子どもたちや10代の若者たちを連れて来ることには、幾つもの挑戦がありますが、一般市民の間には、助けの手を差し伸べ、こうした挑戦の解決を見いだそうとする意欲があります。1万3500人以上の人々が、避難所を必要としている難民の子どもたちの里親となり、彼らを養育できるよう願っています。ホーム・フォー・グッドはこうした人々から、非常に大きな支持を得ています」
「私たちは、英国には難民の子どもたちを受け入れる力があると信じています。しかし、現在の国と地方自治体のシステムは十分に整っていません。ですから、私たちは政府に対して、難民の子どもたちにもう1度扉を開き、どうすれば子どもたちのためにもっと多くのことをしてあげられるのかを見いだすための議論に加わるよう、呼び掛けています。市民社会は、これらの子どもたちを保護するために、地方自治体を助けたいと願っています。私たちは指導者として、政府が人々のこうした意欲を積極的に用いることを援助します」
声明の署名者には、キリスト教入門講座「アルファ・コース」で知られるホーリー・トリニティー・ブロンプトン教会のニッキー・ガンベル牧師、英国福音同盟のスティーブ・クリフォード総主事、英国バプテスト同盟のリン・グリーン総主事、スコットランド・バプテスト同盟のアラン・ドナルドソン総主事らがいる。
英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーも9日、声明(英語)を発表し、政府に決定を見直すよう要求した。
ダブズ議員は当初、身寄りのない難民の子どもたち3千人を受け入れることを提案していた。この数は、欧州にいる身寄りのない難民の子どもたちの数を考慮して算出されたもので、ダブズ議員は、英国が「受け入れるべき公正な人数」だとしていた。最終的に英政府は昨年5月、具体的な数値目標を定めない形で子どもたちの受け入れを決定していた。
ホーム・フォー・グッドの創設者で代表のクリシュ・カンディア氏は、ツイッターに投稿した動画(英語)で、「私は怒っています。私は、政府が難民の子どもたちに関して採っている立場について怒っています。英国は、私たちが彼らを助けるべきではない理由として、ある誤った論理に惑わされています。ある人は、もし私たちが彼らを助けるなら、もっと多くの子どもたちが英国に押し寄せると主張しています。それは全くの誤りだと私は思います」と述べた。
「それは、有刺鉄線で傷つき、血まみれになっている幼い子どもを道で見掛けながらも、『私たちはその子を助けることはできません。助ければ、もっと多くの子どもたちが有刺鉄線で自分自身を傷つけることを助長してしまうからです』と言うようなものです。それは違うのです。あなたは困窮している1人の子どもを今、助ける必要があるのです。そして彼らに背を向けることは、見捨てることなのです」
「欧州に来たこれらの子どもたち、アレッポ、アフガニスタン、エリトリアで『イスラム国』(IS)と爆弾から逃れている子どもたち――私たちは、これらの子どもたちが困っているのですから、助ける必要があるのです。ある人々は、私たちが全力を尽くしていると主張しています。それは真実ではありません。1万3500人もの人々が、子どもたちを助けたいと願って、私たちの小さな慈善団体『ホーム・フォー・グッド』に連絡をくれたのです。私は、市民社会が助けたいと望んでいるのですから、政府もそれに加わるようにと呼び掛けているのです」