埼玉県所沢市のキリスト教会とYMCAが協力して開催する第24回「所沢市民クリスマスコンサート」が2日、所沢市民文化センターミューズ・アークホール(埼玉県所沢市)で開催された。今年のゲストは、「もみの木保育園」(東京都稲城市・世田谷区)を拠点に活動するキッズゴスペル「エバーグリーン・クワイアー」で、子どもたちの歌声に聖書のメッセージをのせて、クリスマスの本当の愛を観客に伝えた。また、歌手でユニセフ(国連児童基金)アジア親善大使のアグネス・チャンさんがスペシャルゲストとして登壇し、アイドル時代の名曲「草原の輝き」などを披露し、クリスチャンとして愛と平和のメッセージを語った。
総合司会のMeguちゃん(所沢地域貢献型子どもタレント)が同市のイメージマスコット「トコろん」の手を引きながら仲良くステージに登場し、「クリスマスと聞いて何を思い浮かべる?」「クリスマスケーキ?ローストビーフ?最後に、狭山茶?トコろんは食いしん坊だね」と、地元ネタを交えたオープニングトークを繰り広げると、その2人のほほえましい姿に、会場には一気に温かい空気が広がった。Meguちゃんの掛け声に合わせて、観客全員で声をそろえて「メリークリスマス」と開演した。
まず早速、スペシャルゲストとして、真っ白い衣装に身を包んだアグネスさんが盛大な拍手に迎えられて登場。「クリスマスといえば、私はクリスチャン。アグネスという名前は、私のクリスチャンネーム。カトリックの洗礼を生まれてすぐ受けて、ミッションスクールに通い、夫も結婚するときにクリスチャンになった。彼のクリスチャンネームはトーマス」と自己紹介し、「今日は特に気持ちが一緒なので仲間だと思ってやって来た。皆さんとクリスマスを一緒に祝うことができてとてもうれしい」と笑顔であいさつ。「子どもの時から聖歌隊のクリスマスキャロルで町中を回っていたので、アカペラでクリスマスソングを歌うのは得意」だと話して「きよしこの夜」を英語と日本語で歌い、さらに自身のレパートリーの中から「草原の輝き」をクリスマス風にアレンジして披露した。
また、アグネスさんが3人の子どもたちにいつも聞かせている、「誰もが心の中にたくさんの幸せの種を抱えている。その種は、誰かの心にまいて初めて美しい花を咲かせる。自分も花を咲かせたければ、魅力的な人間になって種をまいてもらわなければならない。まいてもらった花を咲かせてまた種を増やせば、またまくことができる」という話を作詞家が歌詞にした「しあわせの花」という曲を紹介。さびの部分「しあわせの花を咲かそう 心の中にいくつも ささやかでも私たちは この世に生まれた花」の手話をレクチャーされた観客が、アグネスさんの歌声に合わせて、両手を大きく挙げて「花」を表現すると、会場全体は一体感に包まれた。
アグネスさんがキリスト教の教えの中で一番好きなメッセージは、「神様は私を含めてどんな人であろうと誰もを愛している。私たちはどんな弱い人間でも、どんな時でも人を愛することができる」。今年ユニセフ・アジア親善大使に任命されたアグネスさんは、クリスマスの時は特に世界各国の困難な状況にいる人々に思いを寄せると話し、「心の中の幸せの種をたくさんまいて、いろいろな人々の助けになりたい」とその思いを語るとともに、「私たちの愛があれば、世の中は少しずつ良くなると信じている」と呼び掛けた。
「クリスマスは人を愛し、赦(ゆる)す時。ゴスペルを通して、私たち一人一人がとても大切で愛されているという聖書のメッセージを分かち合いたい」とエバーグリーン・クワイアーが登場。約20人の小中学生たちがステージに勢ぞろいし、まずはクリスマスの定番ソング「Santa Claus is coming to town」の歌詞の一部を「Jesus Christ is coming to town」とゴスペルバージョンにアレンジした曲を元気よく歌うと、会場は一段とクリスマスの雰囲気でいっぱいに。時に明るくテンポよく、時に心静かにしっとりと、「聖なる夜のできごと」「かみさまがくれた宝物」「ユー・アー・スペシャル」「だれかのために祈ろう」など、クリスマスナンバーを中心としたオリジナルゴスペルソング6曲を歌い上げた。
そのうちの1曲の「スマイル」という曲の歌詞は、「君の素敵な笑顔で 愛の種をまこうよ やがて芽を出し町中を埋め尽くす 君のほほえみと僕のほほえみで神様の愛を伝えよう」と、くしくもアグネスさんの語った言葉と重なり、「世界にも日本にも、悲しみに包まれ、闇を照らす光を必要としている人がたくさんいる。クリスマスは、一人一人が特別につくられた尊い存在であること、どれだけ愛されているかを思い出す時」という愛と平和のメッセージを観客の心に深く届けた。
会場の入り口付近では、福島県の特産物の販売ブースや、教会のクリスマスグッズ販売ブースが設けられ、コンサート終了後も多くの人で賑わいを見せた。バリアフリーにチャレンジしている同コンサートは、子どもから年配者、健常者から障がい者まで、全ての人が楽しめるように、手話や要約筆記の配慮が充実。その取り組みは市内でも高く評価され、今年は初めて、所沢市と所沢市教育委員会からの後援を得ることができたという。
訪れた約650人ほどの来場者からは、「今までで一番良かった」という声も多数聞かれ、教会関係者からは「誰もが知っている有名人がゲストで来てくれるのは、クリスチャンではない人を誘いやすい」と好評だった。