第43回藤沢市民クリスマス(藤沢市内キリスト教連絡会主催)が12日、市内25のキリスト教会が協力してカトリック藤沢教会(神奈川県藤沢市)で開催された。今年のテーマは「喜びと平和」。コンサートや人形劇など、子どもから大人まで楽しめるプログラムが用意され、約350人が参加した。
プログラムは3部で構成され、午後4時からの第1部では、クリスマスの祈りがささげられた。この日読まれた聖書箇所は、イザヤ書9章1~6節とルカによる福音書2章1~7節。クリスマスメッセージを取り次いだカトリック藤沢教会の芹沢博仁神父は開口一番、「夢がないからメリークリスマス」と述べ、社会はおろか教会の中でさえも居場所がなく、救いを求めて苦しんでいる人たちがいる現実を語り、「居場所がない人たちのところにイエス・キリストがお生まれになった」と伝えた。
芹沢神父は、「クリスマスはプレゼントをあげたり、もらったりして、自分がより豊かになることを喜ぶ日ではなく、分かち合えることを求める日。与えられたものを他の人と分かち合う日」と話し、「こうして一緒に神様を賛美したり、祈ったりする。集まること自体が喜ばしいことだ」と語った。「クリスマスは、自分の居場所がないと思っている人たちと喜びを分かち合うことを可能にする」と伝え、「分かち合いを必要としている人と共に喜ぶことができるように。お互いが平和でありますように」と祈りをささげた。
メッセージの後、会衆全員で「平和のあいさつ」を交わし、キャンドルライト・サービスが始まった。幻想的な明かりが灯る中で、藤沢ナザレン教会のソフィア・ハンドベルクワイアによる演奏が行われ、礼拝堂に鐘の音が響き渡った。ハンドベルの演奏に合わせて、「きよしこの夜」を会衆全員で賛美し、日本バプテスト連盟湘南台バプテスト教会の坂元俊郎牧師が祝祷をささげた。
午後5時からの第2部では、2会場に分かれ、コンサートと人形劇がそれぞれ行われた。礼拝堂で行われたコンサートには、バスバリトン歌手の稲垣俊也氏とソプラノ歌手の遠藤久美子氏が出演。「アヴェ・マリア」や「クリスマス・オラトリオ」など、クリスマスにちなんだ楽曲の数々を、日本基督教団阿佐ヶ谷教会オルガニストの奥山初枝氏のピアノ伴奏により、独唱、二重唱した。
それぞれの曲の合間で稲垣氏は、曲目の説明やそこに含まれる主イエス・キリストの恵みを伝えた。遠藤氏は、「あるクリスマスの出来事」という物語を朗読した。神の存在をまるで信じなかったある農夫が、雪の中で窓にぶつかってくる鳥たちを見て、イエス・キリストがこの世に生まれたのは、あの鳥のようにぶつかって死んでいくしかない自分を救うためなのだと気付く。その内容は、続けて歌われた新垣壬敏作曲の典礼聖歌「聞かせてください」を、一層印象に残るものとした。アンコールでは「アメイジング・グレイス」を披露。歌い終わった後も長い間、拍手が鳴りやまなかった。
同教会内にある信徒会館で行われた子どもたちのための人形劇は、日本バプテスト連盟湘南台バプテスト教会のシオン人形劇団が演じた。この日の演目は「くつやのマルチン」。目の前で繰り広げられるかわいい人形の動きに、子どもたちは引き込まれるようにして見ていた。
藤沢市民クリスマスは、地域とのつながりも強い。JR藤沢駅前では、合唱団「藤沢福音コール」が午後3時から、毎年恒例のキャロリングを行った。この合唱団は、藤沢市民クリスマスでの連合聖歌隊が発展し、1977年に宗教曲を専門に演奏する合唱団として発足。今では定期演奏会のほか、国内外の各地でチャリティー・コンサートを開催している。この日のキャロリングでは、「きよしこの夜」「もろびとこぞりて」「荒野のはてに」など、クリスマスでおなじみの曲を披露した。
プログラムやポスターのイラストも、毎年市民に公募している。今年は、聖園女学院高校に通う2年生の作品が選ばれた。会場で集められた献金は、藤沢市愛の輪福祉基金とYMCA国際地域協力基金に充てられる。
午後6時からの第3部では、市内の教会有志により、温かい豚汁が用意され、和やかな交わりの時が持たれた。毎年参加しているという女性は、「コンサートでは素晴らしい歌が聞けて今年も本当に良かった。藤沢市のクリスマスは、毎年内容が盛りだくさんで楽しめます。クリスチャンでない人も市外の人もぜひたくさん来てほしい」と感想を語った。