イラク全国が直面している緊急事態には、おのおのの教会共同体が持つアイデンティティーの諸要素を、怒りをもって強調することで、キリスト教徒が無秩序に進まないようにすることが必要だと、カルデア典礼カトリック教会のルイス・ラファエル・サコ総大司教は、イラクの全てのキリスト教徒に訴えている。カトリック系のフィデス通信が17日報じた。
同総大司教は、キリスト教徒は、イラクで起きている政治的・社会的な過程について一致団結した立場を表明して、自らを「キリスト教のメンバー」として示すべきだという。
その訴えの中で同総大司教は、「イラク情勢について傍観者にとどまることなく」「『他者と同じように扱われる権利』を共に守るための共通のビジョンと共通の道路地図を見つける」よう、イラクのキリスト教徒たちに呼び掛けている。
同総大司教によれば、「キリスト教のメンバー」という表現の使用は、政治的・社会的な出来事や国の制度に関して、イラクのキリスト教徒たちの一致団結した立場を表すためのもので、「千年にわたるアイデンティティーの保護と対照をなすものではなく」、このアイデンティティーをめぐって「議論をし時間をムダにする」ことを許さないという。
声明の中で同総大司教はカルデア教会について、「和解の過程に貢献するために、全てのキリスト教徒と全てのイラク人に奉仕したい」としており、それは平和的共存という状況に戻るために不可欠だという。
同総大司教は、宣教活動の初めから、キリスト教徒が昨今において支配的な分派主義の文脈の中にある中東に染まっているという危険性を非難していた。
「今、不幸なことに」と同総大司教はフィデス通信に語り、「私はキリスト教徒である以上にアルメニア人であるとか、キリスト教徒である以上にアッシリア人であるとか、キリスト教徒である以上にカルデア人であるという人たちがいるのを耳にします。あちこちに部族的な精神構造が存続していて、だからどの村も『自分の』司教とか『自分の』総大司教を持とうとする。このようにしてキリスト教は消え去っていくのです。私たちは司教団として、自らのアイデンティティーを生きるこれらの悪しき形態に対して用心深くしなくてはなりません」