イラク人キリスト教徒の少女、ミリアムちゃん(12)は、過激派組織「イスラム国」(IS)のために、イラク北部の町カラコシュ(バクーディーダ)を逃れ、避難生活を余儀なくされているが、ISを赦(ゆる)している。そして、避難から約2年がたった今、ISから解放された故郷に帰るのを待ちきれないでいる。
ミリアムちゃんは10月21日、アラビア語のキリスト教衛星放送局「SAT-7」に、「町に戻り、そこにいる友達と会えるのが待ち遠しくてたまりません」と語った。「友達にまた会えるのです」「大好きだった家や母国、故郷の町に戻ることができるのです」 と、ミリアムちゃんは続けた。
ミリアムちゃんの父親ワリードさんは言う。「感無量です。言葉では言い表せません。イラクでは帰宅したとき、『ウェンセフ』と言うのですが、その言葉が今の気持ちを表しています。住んでいた所が破壊されていても、それは問題ではありません」
一家は現在、イラク北部の都市アルビルの郊外アンカワに住んでいる。そこには数万人の避難民がおり、人々は故郷に思いをはせ、帰還に胸を躍らせている。
「アンカワにいる時からこれほど喜んでいるなら、4万人もの人が自宅に戻れた暁には、どれほど大きな喜びになることでしょう」と、ワリードさんは言い添えた。「私たちの喜びを想像してみてください!」
ミリアムちゃんがSAT-7から最初にインタビューを受けたのは、2014年10月だった。ミリアムちゃんは当時、家族の生活を脅かしたISの戦闘員らを神が赦してくれるよう祈ると語り、SAT-7のアラビア語フェイスブックに投稿された動画を見た人の数は、42時間で20万人余りに上った。
「神様は全ての人を愛しています」とミリアムちゃん。「私たちはカラコシュから避難しなければなりませんでしたが、私はそのことで神様を恨んでいません。神様が私たちを養ってくださったので、神様に感謝しています」。ミリアムちゃんは「主の日を待ち望む」という賛美を歌い、イエスへの深い愛を証ししてインタビューを終えた。
一家は先週、その賛美を再び歌った。ワリードさんはその際、神の平和(平安)によって困難な試練の中でも強められたと述べた。
「平和とはイエスによる平安のことで、この世の平和のことではありません」とワリードさん。「平安は、住宅や国家にはありません。たとえ戦火の中に置かれていても、イエスにあって平安を持つことができます。それがある限り、私たちは私たちを追い出した者たちよりも強いのです。イエスを愛する人を征服できる者は誰一人いません」
カラコシュはかつてイラク最大のキリスト教地帯だったが、14年8月にISが町を制圧し、約5万人が避難を余儀なくされた。
カラコシュは現在解放され、IS最後の砦であるモスルの奪還に向けて戦闘拠点の1つになっているといわれている。しかし、10月17日に開始された戦闘は依然として続いており、イラク軍はカラコシュに残留する少数の過激派と戦闘中だともいわれている。
だが治安当局は、モスル周辺の約50の村や町が解放されたことを確認している。政府軍は27日、モスルから約15キロのところにあるキリスト教の町バルテラを奪還した。また29日には、マート・シモニー・シリア正教会の鐘が14年以降で初めて鳴らされた。
SAT-7のインギー・マグディー氏は29日、モスル出身のサベット神父に話を聞いた。サベット神父は、モスルにいるキリスト教徒は「ほんの数家族」だけで、正教会は、ニネベ平野が完全に安全になるまで待った上で、信者らに帰還を勧めることにしていると語った。
サベット神父は、「信者たちを帰還させる前に、モスルの解放作戦が完了し、地域一帯の治安や帰路の安全、道路整備や経済状況の安定を確保する必要があります」と語った。
「2年が経過したこの時に解放が訪れるのは素晴らしいことですが、私たちの喜びが満ちるのは、全員が平穏無事に帰還できた時です」「私たちは、モスルの安定が確保されるよう、これまでの倍の祈りをささげていきたいと思っています」