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人の心から忘れ去られる苦痛 穂森幸一(54)

2016年9月23日06時42分 コラムニスト : 穂森幸一
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マザー・テレサの言葉に「愛の反対は憎しみではなく、無関心です」というのがあります。世の中から取り残されたような高齢者は表現のしようのない寂しさの中にあるといわれます。年金減額、介護料負担などで、生活苦にあえぐ人々も少なくはありません。昔、長寿は人間の幸せの1つともいわれていましたが、今は長生きするのは不安という人もいます。

マザー・テレサは次のような言葉も残しています。「この世の最大の不幸は、貧しさや病ではありません。誰からも自分は必要とされていないと感じることです」。年金制度や医療制度が充実し、老後は経済的には何の心配もいらないと思われている北欧で、高齢者が自らの命を絶つケースが少なくないというのは納得がいくような気がします。

「私は死人のように、人の心から忘れられ、こわれた器のようになりました」(詩編31:12)

私たちが亡くなりますと、当然のことですが、戸籍から抹消され、地上の全ての財産権はなくなり、遺族に引き継がれていきます。この地上で得たもので天に持っていけるのは思い出だけともいわれます。

私たちが死んだら、私たちの存在の全てが消滅してしまうのでしょうか。出エジプト記の中で神は、モーセにご自身を次のように紹介していらっしゃいます。

「また、仰せられた。『わたしは、あなたの父の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。』モーセは神を仰ぎ見ることを恐れて、顔を隠した」(出エジプト3:6)

「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」とは、アブラハム、イサク、ヤコブと関わりを持たれた神ということになります。現在形で表現してあるということは、神との関係は今も生き続けているということになります。全知全能者との関係が生きているなら、肉の体はなくても、必要があればいつでも復活が可能であるということを示しているのではないかと思います。

「私たちの住まいである地上の幕屋がこわれても、神の下さる建物があることを、私たちは知っています。それは、人の手によらない、天にある永遠の家です」(Ⅱコリント5:1)

「地上の幕屋」とは、私たちの肉体を指していることは分かります。たとえ、この体が消滅したとしても、この地上での痕跡が全てなくなったとしても、神との関係は生きているといわれます。私たちの意思も意識もなくならないのではないかと思います。

死者への供養の1つは、忘れないことであり、思い出すことだといわれます。最近では無宗教での葬儀が増えているようですが、葬儀・納骨式が終わったあとで心の拠り所をどこに求めたらいいか悩んでいる人もいるといわれます。

仏教では初七日、四十九日の法要があり、大変だと言う人もいますが、遺族への心の慰め、亡くなった人を覚えるための供養と思えば大切な儀式ではないかと思います。中には月命日にお墓参りを欠かさない人もいます。もし亡くなったあとも意思や意識が何らかのかたちで存在するとしたら、「忘れてはいません」というアピールになるかもしれません。もちろん、お墓参りはしないが、心の中で思い出している人は、その思いが届いていると思います。

アメリカの知人のおじいさんが亡くなられたとき、おじいさんのSNSのアカウントはそのままになっていました。誕生日がくると普通にアップされますが、家族や知人は当たり前のように書き込みをしていました。「肉体は滅んでも魂は生きているから、メッセージを書き込むのです」と言っていました。

幼子はかわいくて生命力に溢れていますので、見ただけで癒やされ、元気が出てきます。年配者の持つ知恵は、生活していく指針になります。69歳まで定年を延長する国もあるようですが、もう少し高齢者が活躍できる環境も必要だと思います。

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◇

穂森幸一

穂森幸一

(ほもり・こういち)

1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。

株式会社カナルファホームページ
穂森幸一牧師のFacebook

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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