この社会の中で、名前というのは、とても重要です。催し物で名義後援してもらうときは、名義使用料を払うのは当然のことですし、アイデアを借りるだけでもアイデア料がかかりますし、フランチャイズ契約を結んで多額の契約費を払うのは当たり前のことです。
ところが、キリスト様の名前で活動しても、仕事をしても、そのアイデアを借用してもフランチャイズ料を1円も払わなくてもいいというのです。とても信じられないくらいの素晴らしい話です。
「聖書はこう言っています。『彼に信頼する者は、失望させられることがない。』ユダヤ人とギリシャ人との区別はありません。同じ主が、すべての人の主であり、主を呼び求めるすべての人に対して恵み深くあられるからです。『主の御名を呼び求める者は、だれでも救われる』のです」(ローマ10:11~13)
聖書の教えを注釈抜きで文字通り受け取るなら、神の救いはとても寛容で気前がいいのです。この救いは特定のグループの方々だけでなく、全ての人類を対象にしています。異教徒でも誰でも主を呼び求めるなら、主が答えてくださいます。
商工会議所のセミナーで博多明太子のふくやの創業者のお話を聞いたことがあります。終戦後、釜山から引き揚げてきて苦労して博多の中洲市場に店をオープンします。目玉商品になるものが必要だということで辛子明太子の製造に取り掛かりますが、人々に受け入れてもらう味を作り出すのに10年かかります。この間、周りの人々は道楽だと言って冷ややかに見ていました。
創業者の川原俊夫氏は、売れ出しても特許を取ろうとしませんでした。それどころか、望む者には誰にでも製法を教えたそうです。1つの店がもうかるよりも、地域全体のものにしたいという願いがあったといわれます。そのおかげで博多に明太子産業が根づいたといわれています。
米国の医学者、ジョナス・ソーク氏はポリオワクチンを開発しましたが、特許権は主張しませんでした。「誰がポリオワクチンの特許権を保有しているのか」と新聞記者が聞いたそうです。そうすると、「特許は存在しない。太陽に特許はないでしょ」と答えたそうです。
東大の教授だった坂村健氏はコンピューターの基本ソフト「トロン」の開発者です。特許を取らずにトロンの仕組みを社会に公開しました。
携帯電話の中にもこの仕組みは使われていますので、特許を取っておれば、億万長者になったといわれます。しかし、坂村教授は「日本語を話すとき、特許料を払えとは誰も言わないでしょう。優れた技術を公開し、公共財にする。これがトロンの発想です」と言ったそうです。
ラジウムという元素を発見したキュリー夫妻は、特許を取ることを拒んだといわれます。世界的に発展してほしいと願ったからだそうです。
キュリー夫妻の娘の回顧録に夫妻の言葉が残されています。「物理学者は、いつも研究を明らかにしている。もしこの発明に商業的な芽があるのだとしても、それは利益を決して受けてはならない偶然なのだ。そして、ラジウムは病気治療のために使われるだろう。そこから利を得ることはできない」と語ったそうです。
この社会には欲望が渦巻き、お金を得るためなら手段を選ばないという人もいるかもしれません。しかし、無欲の先人たちのおかげで、社会に活気が生まれ、便利になり、病気の治療も向上しています。
自分が先人たちの立場に立ったら、無欲になれるかというと、決して自信はありません。しかし、神の無償の愛により生かされ、社会貢献の使命が与えられていると思います。神の無償の愛を、聖書では恵みと表現しています。
「あなたがたは、恵みのゆえに、信仰によって救われたのです。それは、自分自身から出たことではなく、神からの賜物です」(エペソ2:8)
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