遠藤周作の小説『沈黙』を映画化した「沈黙-サイレンス-(原題:Silence)」のマーティン・スコセッシ監督が、世界的に顕著な業績を上げた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞を演劇・映像部門で受賞した。
「生まれ育ったニューヨークを舞台に、暴力や裏社会を描く映画が多いが、信仰、誘惑、罪や贖罪(しょくざい)など、道徳や宗教的なテーマを通じて、社会の暗部や人間精神の奥底をあぶり出していくのが特徴」であると評価。映画「沈黙」の2017年日本公開が大きな話題となる中、今回の受賞は9月29日に迎える遠藤周作没後20年に花を添えるものとなった。
高松宮殿下記念世界文化賞とは、日本美術協会によって1988年に創設された賞で、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で、世界的に業績を残している芸術家に毎年授与される賞。過去にはフランシス・フォード・コッポラ監督、アッバス・キアロスタミ監督、ジャン=リュック・ゴダール監督、黒澤明監督などが受賞している。
スコセッシ監督は、68年に「ドアをノックするのは誰?」で長編監督デビュー。76年の「タクシードライバー」でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、米映画界を牽引する存在となる。アカデミー賞では「ギャング・オブ・ニューヨーク」や「アビエイター」などで監督賞にノミネート。6度目のノミネートとなる「ディパーテッド」で第79回アカデミー賞監督賞・作品賞を受賞している。
近年では、映画の修復・保存活動を推進する「ザ・フィルム・ファンデーション」を設立。古いフィルムの保存や修復にも力を入れており、数々のヒット作を生み出してきた監督・プロデュースの実力だけではなく、その幅広い活動や功績が国際的に高く評価されている。
敬虔なカトリック信徒であるスコセッシ監督は、キリスト教会から大きな物議を醸した「最後の誘惑」をはじめ、信仰、誘惑、罪や贖罪などをテーマにしたキリスト教色の強い作品も数多い。最新作として2017年に日本公開を控えている「沈黙-サイレンス-」も、日本文化に造詣が深いスコセッシ監督が28年越しで実現した念願の企画で、江戸初期に日本にたどり着いた宣教師の目から見た当時の激しいキリシタン弾圧を壮大な映像で描き、「人間にとって本当に大切なものとは何か」を問い掛ける歴史大作となっている。
ロドリゴ役のアンドリュー・ガーフィールド(「アメイジング・スパイダーマン」)、フェレイラ役のリーアム・ニーソン(「シンドラーのリスト」)に加え、アダム・ドライバー(「スター・ウォーズ フォースの覚醒」)といった豪華なハリウッド俳優が出演。さらに、日本からも窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシら実力派俳優が集結し、日米最高のキャストとスタッフの集大成となっている本作は、今年度の賞レースにおける有力作との呼び声も高い。