いよいよリオデジャネイロオリンピックの開幕が目前に迫ってきた。ということは2020年に予定されている東京オリンピックまでも、残すところあと4年になるということだ。
すでにさまざまな不祥事が明るみになって世間を騒がせ、地震やテロなどの安全面も懸念され、開催に当たっての心配ごとは尽きない。だが、世界中の人々の関心が集まり、実際に多くの人々が東京を訪れることが確かであるとき、この世界的なイベントにクリスチャンが無関心でいてよいのだろうか。
クリスチャンこそが、スポーツが人々に与える大きな影響を理解し、まずは御心を求めて祈るべきではないか。クリスチャン都道府県人会と東京クリスチャン都人会は7月18日、「東京オリンピックを覚える集会」を東京都千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開催した。
スポーツミニストリーに取り組む米内宏明牧師(国分寺バプテスト教会)が、「教会とスポーツ」をテーマに講演した。講演会後には、参加者一同で東京オリンピックを覚えて共に祈り合い、新国立競技場の建設予定地にも足を運んで祈りをささげた。
東京クリスチャン都人会は、東京に関するテーマを取り上げて定期的に集会を催しているが、昨年、第1回の「東京オリンピックを覚える集会」を開き、同じく米内牧師から話を聞いた。都人会の代表を務める栗原一芳牧師は、「オリンピックをきっかけに、宣教活動において大事な部分を占めるスポーツについて考えたい」と趣旨を説明した。
米内牧師は、スポーツミニストリーの実際の活動について紹介すると同時に、「『皆さんもぜひ』と誘いの言葉を掛けるために話をしたい」とあいさつし、話を始めるに当たって聖書を開き、ゼカリヤ書2:1~5の箇所から「宣教の枠を人間の判断で決めてしまうのではなく、スポーツミニストリーも福音を伝える1つの大切な部分と受け止めていきたい」とメッセージした。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック、そして2019年に日本の12都市で開催されるラグビーワールドカップという世界的なスポーツイベントが、主の恵みが溢れる機会となるように、米内牧師は、メダルを越えた勝利を意味したオリンピックへのプロジェクト「The Ultimate Victory」(TUV)と、スクラムを組む際にかける掛け声をもとにしたラグビーW杯へのプロジェクト「BIND」という2つのプロジェクトを立ち上げて、国内外でのネットワーク作りを進めている。
米内牧師は、元Jリーガーのビスマルク・バレット・ファリア選手との出会いを通じて、1990年代からスポーツミニストリーに取り組むようになった。熱心なクリスチャンで、日本を去る直前まで教会を回ってサッカーを通して交流を図り、証しする機会を設けていたそうだが、帰国直前のインタビューでビスマルク選手が語った言葉は「日本の教会のために一生懸命働いてきた。でも、私が大変だったときに私をサポートしてくれた教会は日本にはなかった」。
キリスト教会の広告塔として選手を教会に招くことは考えていても、肉体的にも精神的にも大変な中にあるプロのスポーツ選手をサポートするということにまで考えが至っていなかったことに深いショックを覚えた米内牧師は、スポーツが持っている可能性に目が開かれ、それまで目を向けてこなかったスポーツの分野で日本の教会にできることがあるのではないかと気付き、取り組みを始めるに至ったという。
日本の教会では、特に地域のイベントや子どもたちの部活動の試合が日曜日に行われることが多いために、スポーツを敬遠してきたように思われる。実際に米内牧師も一部の牧師たちから、「日曜日に教会に行かなくなるからスポーツはだめだ」と言われたことが今なお印象深く心に残っているそうで、そのような声があることを踏まえて、「スポーツミニストリーの可能性」を提示している。
スポーツを「神が造った世界共通語」という米内牧師は、「スポーツを通して人々と教会との接点が生まれる」「1つのフィールドの中では言葉や文化、宗教を越えてのコミュニケーションが成り立つ」と、実際に海外に遣わされている宣教師たちの事例を紹介した。
また、「スポーツは聖書が語ろうとしていることを表現してくれることがある。スポーツをしている人々には聖書の言葉にピンとくるものがある」と話す米内牧師は、サッカーの三浦和良選手の「人生は見えないものと常に向き合い続ける」、陸上の為末大選手の「勝負強い選手は勝負で負けようが勝とうが自分には価値があるという自己確信がある」という言葉を引用し、アスリートたちには聖書を語りやすいと指摘した。
その上で、日本のスポーツ人口が約8千万人にも上るというデータを示し、スポーツに関心を持ってこなかった日本の教会は、その8千万人という日本の大半の人々に届いていないと言えるのではないか、と問い掛けた。
自分や自分の教会でもスポーツミニストリーができるのかと不安に思う人に向けて米内牧師は「人を育て、社会を作る力があるスポーツは、個々のクリスチャンを育て上げ、差別など社会にあるあらゆる問題に取り組んでいこうとする教会の働きと重なる部分が多い」と力強く励ましのエールを送る。
既に日本各地の教会で行われているスポーツミニストリーには、本郷台キリスト教会の少年サッカーチーム「エスペランサSC」や花園ラグビー場ゴスペルフェスタなど、人々の注目を非常に集めているものがたくさんあるが、それらも全て最初は何もないところから始められたのだといい、「工夫次第で何でもできる、世界的なイベントを控えるこの貴重な機会に、何かができると期待している」と米内牧師は話した。
TUVとBINDの最大のビジョンは、日本のクリスチャン人口が10倍に増やされること。このビジョン実現に向けて、教会同士のつながり、ネットワークを形成し、教会と地域社会の橋渡しとなり、クリスチャンアスリートを育成するための活動に力を注いでいく。
米内牧師の講演を受けて、「スポーツに対しての意識が変わった」という参加者たちは、小グループに分かれて東京オリンピックやラグビーワールドカップ、スポーツミニストリーを覚えて祈るひとときを持った。
米内牧師から挙げられた祈祷課題は以下の通り。
▽スポーツミニストリーの仲間が増やされるように
▽教会と地域の橋渡しができるように
▽世界の人々との絆を結ぶサーバントリーダーを見いだせるように
▽チャプレンや専門チームを構成し、新しいタイプの開拓伝道が始められるように