ロシアの福音派信者らは、伝道と信仰の実践を厳しく規制する法案がロシア連邦院を通過したことを受け、断食祈祷をもって、ウラジミール・プーチン大統領に同法案の法制化中止を訴えている。
イリナ・ヤロナヤ議員が提出した反テロ関連法案に含まれる伝道規制法案が、ロシア連邦議会の下院である国家院と、上院の連邦院を通過した。同法案では、教会の建物や敷地以外での伝道が禁じられることになる。違反した場合は罰金が科され、外国人は国外退去となる。
ロシアのプロテスタント信徒らは、同法案への抗議活動を行っている。ロシアプロテスタント教会首脳諮問会議のセルゲイ・リャコフスキー代表は、他の福音派指導者らと共にプーチン氏に書簡を送り、「ヤロナヤ議員の法案は、人権と信教の自由に対する違反です」と述べ、同法案に署名しないよう請願した。
「信者が礼拝堂や従来使用されてきた建物以外で自分の信仰を伝えたり、宗教的な文書や資料を配布するために、特別な許可を取得しなければらないのは、不合理で不快なことです。そればかりか、法律違反という大規模な迫害の土台固めにもなります」と教会指導者らは語る。
書簡には続けてこう述べられている。「ソビエトの歴史は、さまざまな信仰を持つ多くの人々が、神の言葉を伝えたために迫害を受けてきたことを物語っています。同法案は、この過去の恥を繰り返すものです」
ロシア国内のプロテスタント信徒らは、6月29日から3日間にわたって断食祈祷を行った。しかし、ミッション・ユーラシアの会長で、モスクワにある教会のベテラン指導者であり開拓者でもあるセルゲイ・ラクーバ氏は、たとえ同法案が法制化されても、教会は地下に潜って活動を続けると言う。ラクーバ氏は、「大宣教命令は、一時の自由な時代のためだけにあるのではありません」と英クリスチャントゥデイに語った。
米ニューオリンズ・バプテスト神学校で教会史を担当するロイド・ハーシュ教授は、米バプテスト連盟のニュースサイト「バプテスト・プレス」へのコメントの中で次のように述べている。
「共産主義の崩壊とソビエト連邦の解体以降、ロシアは当初、福音派に開放的でしたが、着実に閉鎖的になりつつあります。(中略)同法案は、治安維持やテロとの戦いを装い、大統領の権力を強化して反対勢力を黙らせるための、プーチン氏の試みです。大統領の権力に対抗するものは、全てテロ行為とみなされるのです」
ハーシュ氏によれば、同法案は、福音派が犠牲になることでロシア正教会に有利に働くという。「この法案は、共産主義のなごりが今も残っていることを示しています。共産主義は、どの宗教も皆同じだとみなしていました」
「法案に盛り込まれている伝道の規制は、テロへの対抗措置と平和維持の名目で正当化されています。同時にそれは、さまざまなタイプの政治評論家や、ロシア正教会以外の宗教活動を取り締まるための大きな網でもあるのです」とハーシュ氏は言い添えた。