福岡県宗像(むなかた)市に建設予定の正教会の聖堂が、ロシア中南部の中心都市バルナウルで建設されている。この聖堂は、宗像市に住む正教徒の日本人男性が発注したもので、バルナウルで完成した後、一度解体して日本に送られるという。建設は1月から始まり、完成は11月を予定している。ニュースサイト「ロシアNOW」が伝えた。
この教会は、日本に正教を伝えたロシア人宣教師の名前にちなんで、聖ニコライ・ヤポンスキイの名が付けられる。聖ニコライは、日本正教会の東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)=東京都千代田区=を建てたことでも知られている。設計を担当したのは、ロシア外の教会を建設した実績のある建築家で、伝統的なロシア様式の外観を守りつつ、来訪者が靴を脱ぐことのできるテラスを設けるなど、日本の伝統を取り入れ、日本の気候風土に合わせた聖堂になっているという。中国・モンゴル・ロシアにまたがるアルタイ山脈から切り出されたアルタイ杉を使用して建設されている。
聖堂を発注した男性は、ロシア人女性と結婚した際、結婚の条件として正教に改宗し、「フョードル」の名で洗礼を受けた。ロシアの通信社「スプートニク」が1月に報じたところによると、フョードルさんは、今では教会を建てようと決心するほどの敬虔な正教徒で、教会建設のための敷地を購入して、家族と共に教会の完成を待っているという。
宗像市の目の前に広がる対馬沖は、1905年5月、日露戦争の終結を決定付けた日本海海戦が繰り広げられた場所だ。この海戦では、4830人のロシア人が命を落としたが、潮の流れに乗って宗像市近郊の浜辺に打ち上げられたロシア海兵の遺体は、地元の漁師たちによって丁重に埋葬された。宗像市の大島には、慰霊碑が建立されており、2012年からは、両国の戦没者を慰霊する催しも開かれている。この教会は、両国の痛ましい歴史を記憶にとどめ、追悼の意を表すとともに、今も兵士たちの墓を守り続けている日本人への感謝のしるしとして建てられるという。