ロシア正教会のモスクワ総主教庁渉外局長であるイラリオン府主教は14日から15日まで、モスクワ総主教キリルによる祝福を受けて、バチカン(ローマ教皇庁)でローマ教皇フランシスコに謁見した。バチカン放送局(フランス語版)やロシア正教会の公式サイトなどが伝えた。
ロシア正教会の公式サイトによると、イラリオン府主教は14日、ローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会議長のクルト・コッホ枢機卿と面会した。両者はモスクワ総主教庁とバチカンの協力に関するさまざまな側面について話し合った。
15日、イラリオン府主教はバチカンの使徒宮殿で教皇フランシスコに迎えられ、キリル総主教のあいさつを伝えた。この会合で数多くの諸問題が話し合われ、その中には、中東や北アフリカのキリスト教徒たちが直面している悲惨な状況、現代社会における家族についての伝統的理解を守る共通の行動の必要性、そして文化の領域におけるローマ・カトリック教会とロシア正教会の協力が含まれていた。
教皇フランシスコは、イラリオン府主教とロシア正教会の代表団に教皇のメダルを贈呈。これに対し、イラリオン府主教は、生神女マリヤの「全ての苦しむ人々の喜び」というイコンが奉納されたモスクワ教会の聖職者、アレクシイ・トルニン長輔祭が救世主を描いた昔のロシアのイコンを贈呈した。一方、ロシアのインタファックス通信によると、このイコンはレプリカ(複製)だという。
謁見の前に、イラリオン府主教は教皇公邸管理部を訪問し、ラファエロやエル・グレコの絵画を含む展示品を見学した。ロシア正教会によると、イラリオン府主教の注意を引いたのは、クジャク石や宝石でできたキリスト磔刑(たっけい)の図。これは、ロシア皇帝ニコライ1世がバチカンを訪問した際、当時の教皇グレゴリウス16世に贈呈したもので、その訪問はロシアの君主による唯一のバチカン訪問だったという。
同日、イラリオン府主教はモスクワへ戻った。なお、これに先立ち、ロシアのウラジミール・プーチン大統領が10日、バチカンで教皇と会談していた。
一方、バチカン放送局(フランス語版)によると、イラリオン府主教は、昨年10月に行われた家族に関する司教会議に「友愛代表」として招かれていた。ただ、ローマ教皇とモスクワ総主教の会見は、いくつかの試みにもかかわらず、まだ実現したことがないという。