「あなたが事を決めると、それは成り、あなたの道の上には光が輝く」(ヨブ記22:28)
英語のユーモア辞典に「Conceive(妊娠する)」がさまざまな意味に解釈されています。初孫を待ち望むおじいちゃんは「まだか」と期待し、未婚のカップルは「まさか」と困惑し、子だくさんの夫婦は「またか」と、うんざりするのです。
フランスの思想家モンテーニュが随筆録『エセー』の中で次のように言っています。
「この世には、幸福な事件とか、不幸な出来事とかは存在しない、あるのは幸福な見方、不幸な見方があるだけである。・・・人生はただ材料を提供するだけでそれに幸、不幸の形を与えるのは我々人間の側にある」
では「幸福を生む見方」とはどんなものでしょうか。
パリの国際心理学会で、米国の研究チームが興味深い報告をしました。彼らはボルチモアのスラム街の少年たちを観察し、環境がその少年たちの人生にどのように影響を与えたかを調べました。
スラム街出身の少年たちは、犯罪者になる確率が極めて高いことが分かりました。ところが例外の3年間があります。この3年間の少年たちは犯罪者になった者がほとんどいないのです。それだけでなく、医師、弁護士、教師、牧師などの職に就き、社会に大きく貢献している者もいるのです。
研究チームのメンバーは、「例外の3年間」のグループの人々を一人一人尋ね歩き、アンケートをとったところ、自分の人生に大きな影響を与えた人物として、1人の女性教師の名前を挙げたのです。そこでさらに研究チームは、すでに老人ホームに入所しているその女性を捜し出してアンケート結果を見せて尋ねました。「あなたはあの子たちに何を教えたのですか」
彼女は答えました。「私は何も特別な事は教えていません。ただ『あなたは神様にとって大切な存在であり、神様に愛されている者なのよ』と言って毎日“ I love you”と言って抱きしめてやりました」
この女性教師は、人生の出来事を正しく見るために必要な「幸福を生む見方」を自然と生徒たちに教えていたのです。
「幸福を生む見方」を身に付けるためには、二つのことを知る必要があります。
1. 自分の存在価値を知る
私たちは進化論者が唱えるように偶然の産物ではなく、知恵と愛に満ちた創造者なる神によって造られた実にユニークな存在であり、「歴史始まって以来の人」なのです。
人間は「あなたは神によって造られた大切な存在なのですよ」というメッセージを聞くことなしに、自己尊厳性や自分の存在価値を確認することができないのです。そして、自分の存在価値を知った人は、人生のさまざまな困難に勇気をもって立ち向かい、乗り越えることができるのです。
2. 神の愛を知る
人間は「自分は愛されている」という自覚なしに生き生きと生きられないのです。
米国のある高校の3年生のクラスでの出来事です。先生が生徒たちに3枚のシールを配り「これを日頃感謝している人や愛している人にメッセージを書いて渡しましょう」と提案しました。
1人の女子高生は、就職でお世話になった会社の採用担当者の人に感謝のメッセージを書いて、残り2枚のシールと共に渡しました。採用担当者の人は、社長の所に行って日頃の感謝の言葉を記して、残り1枚のシールと共に渡しました。
社長は手にした1枚のシールを家に持って帰り、息子の部屋に入りました。彼は事情を息子に話し「このシールをお前に渡したいんだがいいかな。いつも忙しくゆっくり話す時間もないことを許してくれ、しかし、私はお前を心から愛しているんだ」と言って、「最愛の息子へ」と書いてシールを渡しました。
受け取った息子はしばらくその言葉をジーッと見ていましたが、突然泣き出したのです。「お父さん、ありがとう、本当にうれしいよ、ボクはお父さんに愛されていないと思って寂しかったんだ」
愛は人を強くします。勇気を与えます。人生を前向きに生きる力を与えてくれるのです。
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