「この世と調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新によって自分を変えなさい」(ローマ12:2)
ある国の皇太子がクルージングを楽しんでいました。やがて霧が出て来て、前方を遮りました。すると、前方に灯りが見えます。このままでは衝突です。相手にメッセージを送ります。「そちらの進路を変更されたし!」。すると、相手から返事が返って来ました。「そちらが進路を変えてください」。皇太子は頭に来てあらためてメッセージを送ります。「そっちが進路を変えろ! こちらは皇太子である」。すると、再び相手からの返事です。「進路を変えるのはそちらです。こちらは灯台です」
もし、あなたが皇太子ならどうしますか?
この話のポイントは、自分が変わることで危機を脱することができるということです。オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーは「マイナスをプラスに変えることのできるのは、人間だけが持つ能力である」と言います。
この能力を引き出すために、私たちは特に二つのことに心をとめるべきです。
1. 言葉の力を信じる
言葉には力があります。神経医学の専門家は「言語中枢神経が、体全体の全ての神経をコントロールしている」と言います。つまり前向き、肯定的に言葉を発するとき、体全体は、前向き、肯定的に活動しようとするのです。
確かに、言葉に体は敏感に反応します。例えば、「レモン」とか「梅干し」という言葉を聞いただけで、口の中に唾が溢れる人がいるはずです。「サバ」と聞いただけで、体中にじん麻疹が出る人がいるかもしれません。
この時、一つの注意点があります。否定的な言葉は、肯定的な言葉よりもはるかに力を持っています。従って、否定的な言葉は人を傷つけたり、自分のやる気を削いでしまうのです。ですから、言葉は選んで肯定的、前向き、創造的に使わなければなりません。
人に注意するときに「ここが間違っているよ」と言うより、「ここを直すと完璧なんだけれど」と言うほうが相手には伝わるし、「キミはこれがあるからダメなんだ」と言うより、「キミはこれが直るともっとステキなんだけど」と言ってあげる方が、相手は受け入れてくれるはずです。
「今回は難しいな」と考えるより、「今回は飛躍のチャンスだな」と考える方が力が湧いて来ます。そしてどんな言葉より、私たちに力を与えてくれる言葉は神の御言葉です。
「この律法の書を、あなたの口から離さず、昼も夜もそれを口ずさまなければならない。そのうちにしるされているすべてのことを守り行うためである。そうすれば、あなたのすることで繁栄し、また栄えることができるからである」(ヨシュア記1:8)
2. 心に火を燃やす
人の持つ可能性を花開かせるためには、心に燃えるような情熱が必要です。水が沸点に達するのに熱が必要であるように、人の心が燃えるために情熱が必要です。そして人は情熱のある人に引かれるのです。
日本電産(株)という会社があります。社長は永守重信さんです。28歳の時、仲間4人と資本金2千万円で始めました。32年後には、9万人の社員と連結売上高1兆円に迫る会社に成長しました。
永守さんは中2の時に父親を亡くし、苦労して高校と職業訓練校を卒業し、テープデッキの製造メーカーに入社します。しかし、そこで永守さんは新しいアイデアを提案しますが、上司は取り合ってくれません。そこで「いずれ超精密小型モーターの時代が来る」と見越して、1973年、6年間のサラリーマン生活に終止符を打って独立します。「他人のやらないことをやろう」をモットーに快進撃を始めました。
この会社の採用・人事・教育は実にユニークです。例えば、社員を中途採用するときも、ぬるま湯の社風の会社に勤めていた人は採らないそうです。できれば急成長し、その後すぐ倒産した会社にいたとか、リストラに会ったりという人、つまり天国と地獄を味わった人が良いそうです。そういう人は危険意識があるので、会社を良くしようと一生懸命に頑張るのです。
永守さんは言います。「企業にとって、いい人材とは偏差値の高い大学や、一流企業に勤めた人ではない、心の中に火種を持ち、自分の心に火をつけ、人の心にも火をつけられる人です」
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