滋賀医科大学(大津市)は9日、教え子の修士論文を盗用・改ざんして、自身の論文として学会誌へ投稿していたとして、同大医学部看護学科の教授を懲戒解雇処分にしたと発表した。調査の結果、教授の論文は修士論文と95パーセント同じだったという。処分は1月28日付。
発表によると、不正があったのは、教授が2012年12月に単著で学会誌へ投稿した論文。昨年6月、この論文について「修士論文に酷似しており、盗用・改ざんに当たるのではないか」とする匿名の申し立てが寄せられ、大学が調査委員会を設置。関係資料の調査や関係者への聞き取りを行い、昨年12月に盗用と改ざんがあったと認定したという。
調査の結果、教授の論文は論述や数値データが修士論文のものと95パーセント同じで、修士論文から31カ所373行、また教授が教え子から受け取っていた修士論文の草稿から2カ所3行にわたって流用されていたという。教授は、この論文を単著の原著論文として発表した理由について、「(教え子の)修士論文作成者と連絡が取れなかったため、共同研究者としての立場で判断し、単著で投稿した」と説明していたというが、共同で研究した形跡はなく、教え子に連絡し、承諾を得る努力をしたことも認められなかったという。
また、教授の論文は、修士論文で用いられている調査データをそのまま用いて作成されているが、論文中に示されている調査期間と実際のデータ収集期間が食い違っており、実際にこの調査期間にデータの収集が行われた事実もなかったため、盗用だけではなく、改ざんもあったと認定したという。
調査結果ではその上で、「研究倫理規範を逸脱する不適切なものであっただけでなく、大学院生の研究指導にあたる教育者として、信義にもとる倫理違反があったものと認められた」としている。
問題の論文については、大学側からの勧告を受け、教授が関係学会に撤回と削除を申し出、関係学会が1月27日付で対象論文を取り消し処分にしている。
滋賀医科大学の塩田浩平学長は、「今回の事態を真摯(しんし)に受け止め、今後の研究者倫理のより一層の徹底を図り、再発防止に努める」としている。なお、滋賀医科大学は教授の性別や年齢は公表していない。