カラフルなイラストや写真、地図や表が印象的な、旧約聖書学者による聖書の入門的な概説書。
版元の西東社は、本書について「人類史上最大のベストセラー『聖書』をオールカラーでひもとく! 旧約聖書から新約聖書まで、教えや登場人物がイラスト図解でよくわかる! 豊富なエピソードやキーワード解説で、もっと知りたい! にも応えます」と説明している。
「身につく教養」「天地創造から最後の審判まで、聖書の世界がスッキリわかる!」と表紙にあるように、本書は聖書全体について初めて知りたい、理解したい人のために書かれたもの。
著者は青山学院大学教授の旧約聖書学者で、日本基督教団石神井教会担任教師。これまでにも、『聖書は何を語るか』(日本キリスト教団出版局、1998年)や『知識ゼロからの聖書入門』(幻冬舎、2011年)、『預言者の信仰―神から遣わされた人々』(日本キリスト教団出版局、1995年)、『旧約聖書と現代』(日本放送協会、2000年)、『イザヤ書は一冊の書物か?―イザヤ書の最終形態と黙示的テキスト』(教文館、2004年)などの本を著している。
内容は、序章「聖書を読む前に」(9~28ページ)で聖書とは何か、旧新約聖書の構成などが短く簡潔に述べられており、聖書についてより詳しいことに立ち入る前に準備ができるようになっている。その後は、旧約聖書に関する1章から5章(30~144ページ)と、新約聖書に関する1章から5章(145~250ページ)からなっている。旧約聖書に関する1章から4章では、「『旧約聖書』の祭り」、そして新約聖書に関する1章から5章では、「『新約聖書の祭り』」というコラムがそれぞれついている。
旧約聖書に関する1章「神による世界の誕生と族長物語」(29~60ページ)では、創世記にある創造からヨセフまでの15の主なテーマが描かれ、コラムとして過越(すぎこし)祭について説明が加えられている。
同2章「約束の地を目指す民の旅」(61~78ページ)では、出エジプト記などに記されている、モーセからイスラエル侵入以前のカナンまでが八つのテーマに分けて述べられ、仮庵(かりいお)祭に関するコラムが付け加えられている。
また、同3章「民を導いた英雄たちの戦い」(79~110ページ)では、士師からサウル、ダビデそしてソロモンに至るまでの15のテーマが述べられており、七週(しちしゅう)祭についてのコラムもある。
そして同4章「大国に翻弄された王国の興亡」(111~138ページ)では、イスラエル王国の南北分裂からユダヤが大国に翻弄されるまで、またその中に登場する預言者など13のテーマについて記され、最後にプリム祭についてのコラムがある。
さらに同5章「現代に通じる人生の教訓書・知恵文学」(139~144ページ)では、ヨブ記や詩編・雅歌・ダニエル書・箴言・コヘレトの言葉が短く紹介されている。
次に、後半の新約聖書に関する1章「荘厳なる伝説に彩られた救世主の誕生」(145~162ページ)では、イエスの誕生とその時代背景、および少年イエスや洗礼者ヨハネなど八つの項目について述べられており、クリスマスに関するコラムが歴史的な視点から記されている。
同2章「弱き者に手を差し伸べたイエスの伝道活動」(163~180ページ)では、ヨハネがイエスに洗礼を授けてから、イエスが故郷ナザレを去るまでの八つの活動が記され、コラムではハロウィンがキリスト教との関連で述べられている。
同3章「民の価値観を覆したイエスの教え」(181~196ページ)では、教えの骨子や三つの譬(たと)えなどが、七つの項目にわたって記され、これにカーニバルに関するコラムが加えられている。
同4章「贖罪の使命を果たしたイエスの受難」(197~220ページ)では、イエスのエルサレム入城から十字架と復活を経て昇天に至るまで11の項目が含まれ、コラムで復活祭が紹介されている。
そして最後に同5章「師の教えを世界に広めた弟子たちの時代」(221~250ページ)では、聖霊降臨から黙示録に示された終末まで14のテーマが盛り込まれており、聖霊降臨祭に関するコラムでこの章が結ばれている。
総じて、聖書をいきなり読むのはちょっと抵抗があるけれども、聖書を読む前にその主な内容を知っておきたいという人には、本書は良い本かもしれない。もっとも、聖書を読まずに本書を読むだけで終わらせるのではなく、本書のような概説書に続いて、それを片手に聖書そのものの全体を読むことが必要となるのは、言うまでもないことだが。
大島力著『カラー版 イチから知りたい! 聖書の本』西東者、2016年1月25日、256ページ、本体1200円(税別)