年配者の会話に「もう少し若かったら挑戦するんだけど・・・」とか「生まれ変わったらやってみたい」などがあります。しかし、この人生は、たとえ過去に失敗したことがあっても、何度もやり直すことができるのではないかと思います。
聖書の中に登場する信仰の父、アブラハムが、神様の召命を受けて立ち上がったのは、高齢者になってからです。
「アブラムは主がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、七十五歳であった」(創世記12:4)
徳島県の上勝町は四国の山中にありながら「葉っぱビジネス」が盛んです。京都の料亭などから和食の飾りに使う葉っぱの注文を受けて、おばあちゃんたちが籠をかついで山に入り、葉っぱを取ってきて発送します。何とこの注文はパソコンで受けて、タブレットを見ながら葉っぱ探しをするそうです。この仕事に従事している一人の女性は82歳で、月収は50万円から60万円というから驚きです。
このビジネスの発端は、一人の青年が農協の営農指導員としてこの村に赴任してきたことに始まります。彼がたまたま大阪の料亭で食事をする機会があったとき、料理に添えられていた青モミジの葉っぱを若い女性たちがハンカチに包んで持ち帰るのを目撃しました。こんな葉っぱなら、村にいくらでもあるということで、会社を立ち上げ、販路を開拓しました。葉っぱがどのように日本料理に用いられているか、京都の料理人を招いて講習会を開き、人々に葉っぱの価値を知らしめていったのです。
おばあさんたちは正社員として雇われ、その働きによって報酬が増えていきました。そうすると「風邪をひいている間もない」ということで活気が出てきました。村に収入の道が開けたということで、都会から帰ってくる若者も出てきました。このビジネスは少子高齢化問題、医療、年金問題、環境問題を一気に解決していきます。
次の2件はテレビで紹介されていた事例です。大阪府東大阪市の株式会社アクアテックの社長は89歳だそうです。今までにないポンプをつくる会社をつくろうということで70歳を超えてから起業しましたが、そのポンプの機能は国内外から注目されています。
東京都江戸川区の不動産会社の社長は85歳の女性です。80歳のときに宅建の資格を取得し、孫と一緒に不動産業を始めます。彼女は過去に教員の妻として転勤を繰り返し、借家の問題で悩んでいたことを思い出しました。自分が悩んでいたこと、不便に思っていたことを解決すれば、お客様にも喜んでいただけると確信します。売買専門、仲介手数料なし、24時間営業の看板を掲げたところ繁盛し、年商3億円にもなっているといいます。
人手不足とか後継者不足などと叫ばれていますが、思い切って定年を75歳まで延長したら問題は解決するのではないでしょうか。引退してから遊びたいと思っていたとか、旅行に行きたいと思っていたのに、その楽しみがなくなるという反対意見もあります。もちろん強制ではなく、選択制にし、週3日働いて4日休む、あるいは長期休暇制度を取り入れるというようにしますと、充実して働くことができます。
牧師不足とか、宣教師不足といわれていますが、60歳でも献身できるシステムをつくりますと、不足を補うことができるのではないかと思います。
若いころ、勉強したかったけどできなかったと言って、70歳を過ぎてから大学に入学する人もいらっしゃいます。人の生き方は多種多様です。思い立ったときが一番いいときだと思います。
「私たちは神とともに働く者として、あなたがたに懇願します。神の恵みをむだに受けないようにしてください。神は言われます。『わたしは、恵みの時にあなたに答え、救いの日にあなたを助けた。』確かに、今は恵みの時、今は救いの日です」(Ⅱコリント6:1、2)
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穂森幸一(ほもり・こういち)
1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。