どこを見ても、男、男、男・・・の「罪人の友 主イエス・キリスト教会(通称:罪友)」。賛美のキーも低め、ゴツゴツとしたこわもての男たちが手にする聖書は、自分のものより小さく見える。彼らの何よりの強みは、その剛健な腕でも、どこまでも聞こえそうな大きな声でもない。絶えず祈る・・・その祈りが強力なパンチよりも、すごみのある汚れた言葉よりも強いことを彼らは知っている。
誰かが病気になれば皆で祈る、誰かに経済的な困難がやってきたら、皆で祈る、誰かにサタンの誘惑が襲ってきそうになったら、なおさら祈る。誰かが喜んでいるときは、皆で喜ぶ、皆が泣いているときは、皆で悲しむ。屈強な男たちの感動の涙を、私は何度目にしてきただろう。
今回は、シリーズ初の女性へのインタビューだ。この男性ばかりの罪友教会の受付で、にこやかにほほ笑む美しい女性がいる。佐伯優美さんだ。「教会の奉仕が何よりも楽しい。今のところ、趣味は奉仕かな」と話す彼女は、いつも綺麗なスーツに身を包み、金色に染められた髪を綺麗にカールしている。言葉遣いは、優しく丁寧。感動したときには、人目もはばからず、その大きな瞳から涙を流し、うれしいときは、大きな声で笑う。
佐伯さんは、生まれも育ちも東京都新宿区。大都会のど真ん中で、クリスチャンの両親の愛を一身に受けて育った。小学校から、都内の私立のミッションスクールに入学。「聖書の授業もあったと思うが、正直、あまり覚えていない」と話す。ミッションスクールで、小・中・高校時代を過ごし、その後は美容系の専門学校へ進学した。
卒業後、進路を決めかねていたとき、「夜の仕事をやってみないか? 君ならできると思うよ」と「スカウト」された。夜の世界への好奇心と「スカウト」されたことで、少々の自信がつき、その世界へ入ることを決断した。銀座のクラブ、新宿のクラブで経験を積んだ。財界、スポーツ界、芸能界から闇の世界の大物まで、たくさんのお客さんが出入りした。
「ノルマのある仕事は嫌いではない」と言い切る佐伯さんは、毎日、お客さんとの会話を楽しみつつ、「社会勉強をさせてもらった」と話す。そんな生活の中、お付き合いをすることになる男性が現れた。「紳士的な会社員風」だったと、佐伯さんは話す。しかし、この男性が、佐伯さんの人生に大きな変化を与えることになる。
お付き合いを重ねていく中で、佐伯さんは、その男性の異変に気付くようになった。お金の使い方、そばで話す電話の内容、カバンの中には、薬物を使用したと思われる形跡も見つけた。いわゆる「極道」の世界の人だったことに、その時、初めて気が付いたのだ。
交際して2年が経過していた。不安と恐怖は、日に日に増していき、行き詰った佐伯さんは、誰にも相談できないまま、ずっと離れていた教会の門を叩いた。地元の教会だけではなく、行けるところはどこでも行った。
そして最終的に、警察に通報。彼と待ち合わせする現場に、私服警官を配備してもらい、彼は佐伯さんの目の前で逮捕された。当然のこととはいえ、2年間付き合っていた彼を警察に突き出したこと、彼をだましたことは、その後も佐伯さんを苦しめた。
平安を求めて教会を探していた頃、「極道」「キリスト教会」などをキーワードに、インターネットで検索しているときに見つけたのが、「罪友」だった。「この人なら、私のことを分かってくれるかもしれない」と罪友へ。初めて聞いた進藤牧師のメッセージは今も忘れていない。
「イエス様は、あなたの心の扉をノックしている。それに応答して、開けるのはあなただ」との言葉に、何よりも素直にうなずけた。そして、後から後から流れる涙を抑えきれなかったという。
「平安がない、不安だと思っていたときも、いつもイエス様は一緒にいてくださった。自分でこの扉を開けなければならないと思った」と話す。それからは、自然と夜の世界からは遠ざかっていったという。
3年前の5月、「罪友」で受洗。クリスチャンの両親も喜んでくれた。その2カ月後に、罪友で知り合った男性が、心肺停止の状態で病院に運ばれたことを聞くと、無我夢中で、皆と一緒に祈った。
前日は、一緒に進藤牧師のメッセージを聞いて、駅で別れたばかりだったのに・・・と悔やむ気持ちもあった。しかし、祈りが聞かれ、彼は奇跡的に回復。一時は、集中治療室で生死の境をさまよったが、元気に退院することができた。現在は、神学生でもあるこの男性と結婚を前提にお付き合い中だ。
「自分も神学校に行きたい。聖書ってこんなに面白いんだと、今更ながら気付いた」と話す。今後は、美容の仕事をしながら、神様から示されるビジョンが何かを祈り求めていきたいと話す。