「神が私たちの味方」(ローマ8:31)
先日、押し入れの整理をしていましたら、小さな箱が出てきて、思い出の品物が入っていました。その中に小学生の頃の通知表がありました。先生の評価の欄に「真面目にやっていますが、協調性を持ちましょう。もっと友達づくりに励みましょう」と書いてありました。そういえば、小学校の時はずっと協調性がないと言われていたなあと、昔のことを思い出しました。
私はクラスの仲間と運動場を駆け回ることより、図書館にこもって本を読むのが好きでした。本の世界と現実を混同して笑われたこともありました。
やがて大人になり、研修のために、米国に行く機会が与えられたとき、一番驚いたのは、習慣の違いだけでなく、個人についての評価も異なりました。子どもの頃は「協調性がない」と言われていたのに、「個性的で素晴らしい」と言われました。
洋の東西で評価が分かれることもありますが、米国国内でも地域、人種、出身国により多種多様の価値観があります。そこで学ばされたことは、相手の価値観を尊重するということでした。狭い地域の出来事しか見ていなければ、自分の評価が狭いものになってしまう可能性があります。若い時に外国に行き、見聞を広めることはとても大切だと思います。たとえ、外国に行く機会がなくても留学生の方々と交流することによって異文化に触れることもできます。
米国の教会で研修していたときに、私の世話していた牧師が「一緒にグラスバリーにあるカウンセリングセンターに行かないか」と誘ってくれました。そこの教会がカウンセリングセンターを支援していたので、牧師と長老さんたちが視察に行くことになったのです。牧師から「時間があったら、あなたのカウンセリングもしてもらうかもしれない」と言われたものですから、片道3時間の道中、ずっとどきどきしていました。
そのカウンセリングセンターは中央に大きな池があり、その周辺に森があり、小さな牧場もありました。スタッフの一人が「一緒に散歩に行こう」と誘ってくれたものですから、森の小道を歩きながら、小鳥のさえずりを聞き、動物を見ることができました。何を話したか、覚えていませんが、とにかくいろいろ話をし、楽しい散歩だったという記憶があります。1時間の散歩がほぼ終わったとき、スタッフが「あなたのカウンセリングは終わりました。あなたは大丈夫です」と語り掛けてくれました。
そこのカウンセリングセンターでは、散歩したり、動物に触れたりしながら、心の傷ついた若者が療養しているということです。「動物の世話をし、触れることで心の中に充足感が生まれ、癒やされます」と話してくれました。私もこの施設で自分の劣等感やマイナス意識を切り替えて、積極的に前に進むことを学べたのはとても貴重な機会だと思います。
セールス日本一という元営業マンのお話を商工会議所のセミナーで聞いたことがあります。この方はいつも他の人の5倍くらいの売り上げがあったそうです。売り上げを伸ばす秘訣は、「折れない心だ」と言っています。セールスに行くと、門前払いや、断られることの繰り返しだそうです。ほとんどの人がその途中で心が折れるそうです。
その方は「断られるのが当たり前、話を聞いてもらえただけでラッキー、でもどこかに自分を待ってくれている人がいる。その人を探し出さなければいけない」という思いで、数多くの営業を重ねているうちにトップの売り上げになったそうです。
この世の中には合う、合わないがあります。一回断られたからといって、心が折れてはいけないと思います。
これはセミナーの講師の話ですが、「一人のクレーマーが現れたら、物言わぬ者が10名隠されていると思いなさい」ということです。クレームには真摯(しんし)に対応しなければいけませんが、そのことで心が折れたらいけないそうです。
「では、これらのことからどう言えるでしょう。神が私たちの味方であるなら、だれが私たちに敵対できるでしょう」(ローマ8:31)
「私たちの味方」という言葉が英訳聖書では、「私たちのサイド」と表現されています。もし神様が私たちのサイドに立って応援してくださるのであれば、どんな苦境にあっても前進できるのではないかと思います。
◇
穂森幸一(ほもり・こういち)
1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。