青年たちの視点から、教会に足りないことや教会の持っているものを一緒に考えようと、日本クリスチャンアカデミー関東活動センターは23日、東京都新宿区の早稲田教会で日本基督教団の学生・青年センター「学生キリスト教友愛会」(SCF)主事の野田沢(たく)牧師を講師に招き、講演会を開いた。
この講演会は、「これでいいのか日本のキリスト教」と題する同センターによるシリーズ企画の一環として(公財)早稲田奉仕園が共催したもの。「教会に若い人が来ない」「いつまでたっても日本のキリスト教は1パーセントの枠を超えられない」とよく言われる中で、キリスト教会の枠を超えて世界に関わる若者は日本の社会にたくさんいるとして企画された。
野田氏は初めに、「(日本のキリスト教は)『これでいいのか?』と問われれば、私は同罪者でもある。(教会には)いい部分もあるが、あとは方法論や心掛け。青年伝道をやってこなかったことへの個人・各個教会・教派教団の反省と悔い改めがあってから進めていきたい」と述べた。
SCFについて野田氏は、「SCFは青年の教会への橋渡しになろうと、教会にある時期魅力を感じ得ない青年への補完的役割になろうと努力している。しかし、教会に支えられているのはSCFの方だ」と述べ、「(クリスマスにSCFに来た)100人のうち、教会に行っているのは40人いない」としながらも、「しかし、中心となっている『青年委員』のほぼ全てが教会青年。ただでさえ忙しい中、とてつもなく忙しいSCFの業に関わってくれる。他者のために、神様の証しのために仕えるのは教会青年である」と語った。
その上で「今までの『伝えているもの』は間違いではない。チャレンジとブラッシュアップすればいいだけ。思いを同じくする皆様に、心から感謝します」と結んだ。
野田氏は青年伝道について、それが「私の中ではほぼ死語に近い」と反省を込めながらも、その呼び方の問題では「換言するものがないというのは貧相だ」と述べ、「今の私には攻め(外向き)の伝道はできない。守りの伝道(信仰継承)はまだ何とか(できる)? 絶対にやらなければいけない」と語った。
近年の若者の特性については、「一人一人違う」とした上で、「分かった気にならないこと」が必要であるとし、それらを心得た上で理解の努力が大切だと述べた。そして、青年に対して「なるほど」と返事をするのは「あまり良くない」と付け加えた。
また、若者の状況については、「社会的不安や闇の増大。経済主導。食い物にされる。インスタントなもの(まやかし)の増大(how to 本、スマホ、SNS、自己啓発など)。ツール過多(心がついていかず疲れる)」だと指摘。「聖書(信仰の面)でも現実も成長過程。ましてや大人がだめでこんな社会に。助けが必要」と述べ、「社会状況は変われども、若者はいつの時代も同じ」として、「だからこそ『最近の若者は』『昔は』と言うべきではない」と述べた。
聖書的・教理的・人間的な伝道の根拠について、伝道は「青年へのまことの愛なのか? 組織維持・拡大なのか?」と野田氏は問題を投げ掛けた。そして、教会がすべき、語るべき、配慮すべきは、「彼らの現状に即した、伝わる形で」福音・真理を伝えることだと強調した。
若者向けの礼拝と賛美については、ロック賛美やお笑いメッセージは「すでに時代遅れ」だと指摘。「今は、フラダンスやダンスバトル、ラップバトルなどもある」とも述べた。「若者=ロックではない!」と野田氏は述べ、フランスにあるキリスト教の男子修道会であるテゼ共同体の静かな祈りの歌も「うける」と付け加えた。
野田氏は、青年を信頼し、「人間的愛を覚悟と教会的芯をもって合わせる」ことが大切だと述べた。また、「教会全体で」若者と関わる、知る、愛する、育てる、共通理解をする必要性を強調。そこから、「愛される体験」「神様の愛の共同体の実感」が生まれるとした。
SCFの目的の一つである「交わり」について、本紙記者の質問に対し、野田氏は「SCFでの交わりは幾層にも分かれている」と語り、「信仰者の交わり、出会いで一緒に進められるというのは感謝であり、アメイジング(驚くべき)だ。みんなの配慮と祈りでそうなっているのは本当に素晴らしいと思う」と答えた。
野田氏は1973年、京都生まれ。大学時代に阪神淡路大震災を経験し、市民ボランティアの立ち上げに携わった。東日本大震災では現地コーディネーターとして、日本基督教団の被災者支援センターへ派遣され、地域との信頼関係を作った。
野田氏は現在、SCFの主事を務めているほか、高円寺教会協力牧師、青山学院女子短大・東北学院大講師・日本基督教団震災担当幹事補佐。著書に『希望をつむぐ―被災者支援センター「エマオ」の取り組み』(いのちのことば社、2012年)がある。
「SCFへ青年を派遣ください。縛りません。大切に育てます」と野田氏。SCFについて詳しくは公式サイトやフェイスブックを参照。