全国的な動きを集結させた「市民連合」に続き、全国で続々と誕生している「市民選対勝手連」。今夏の選挙において、野党共闘を求めて候補者を支援する団体で、各地域の選挙環境に応じて、その地域に根差した活動を展開。全国各地に30の「勝手連」が既に誕生している。
昨年末に発足記者会見を終え、10日、千葉市内でキックオフパーティーを行ったのは、千葉県の勝手連「ミナちば」。全国で選挙分析を行い、講演会などを行っている「ブロガー」座間宮ガレイ氏が、昨年12月1日に千葉県を訪れたのをきっかけに、直後の12月4日には数人の有志によって、千葉県の「市民選対勝手連」のフェイスブックページが開設された。現在のフェイスブック登録メンバーは60人ほどだ。
会見後、初の具体的な活動となったキックオフパーティーでは、プロのDJが音楽を担当。コーヒーや茶菓子なども用意され、「政治」を語る場としては、全く新しいスタイルといった印象だった。参加者は、100人を超え、20代、30代の若い層の参加、また女性の姿が多かったのも印象的だった。
「ミナちば」は、昨年9月に成立した安保関連法の廃止と、現政権によって損なわれた立憲主義の回復を求めている。そのためには、国会内の勢力バランスを変化させることに注力しなければならない。
今夏の参議院選挙において、千葉県の改選議席数は3議席。現在までに立候補を表明しているのは、民主党現職の小西洋之氏、日本共産党の浅野ふみ子氏、無所属現職の水野賢一氏、自民党現職の猪口邦子氏、自民党の元榮太一郎氏の5人。この5人が3議席をめぐって、選挙戦を繰り広げる予定だ。
同パーティーには、小西洋之氏と浅野ふみ子氏が姿を見せ、集まった100人以上の千葉県民と熱い議論を交わした。参加者の中には、各党の市議会議員、県議会議員なども県内各所から訪れ、一般市民と同じ目線で話す機会が設けられた。
パーティーは、「ワールドカフェ」と呼ばれる少人数のグループディスカッションから始まった。テーマは、「私たちが望む社会とは?」「どうやって政治や選挙の話を日常生活の中で切り出すか?」の二つ。参院選を語る前に、まずは自分たちが望む社会の青写真を描き、最大の目的である安保関連法を廃止に追い込む野党勢力を国政に送り出すため、選挙や政治に関心のない層へのアプローチについて意見交換を行った。
ディスカッションに参加していた16歳の学生に話を聞くと、「戦争のない平和な社会を望む。当たり前のことを当たり前にできる社会が日本の未来にあればよいと思う」と意見を述べた。
日常生活の中で、政治や選挙の話を他人とすることについては、「家族や地域では、政治の話もできるが、職場では難しい」といった意見が多かった。参加したカトリック信徒の女性に話を聞くと、「教会の中でも、政治の話は難しいのが現状」と語った。また、30代の男性からは、「SNSなどを使って、『つぶやいてみる』のも一つの方法では? その『つぶやき』に反応した人と話ができれば、それで良いと思う」といった意見もあった。
数十年、憲法9条を守る活動などを行ってきたという男性は、「今まで、長年こうした活動を行ってきたが、昨夏からは新しい風を感じる。若い学生が国会前に出向き、子どもを連れたお母さんたちがデモに参加している。こうした動きは、非常にうれしく思う」と感想を述べた。
「ワールドカフェ」に続いて行われたのは、両候補者によるトークセッション。安保関連法について、立憲主義について各3分ずつ話した。最初にマイクを握った小西氏は、「安保国会では、自民党の佐藤議員に殴られた議員です」と自身を紹介。「安保関連法は、明らかな違憲。憲法9条が改憲されるようでは、日本は法治国家ですらなくなってしまう」と現政権を痛烈に批判し、「次の参院選は、絶対に勝たなければいけない闘い。皆さんと共に、全力で闘いたい」とあいさつした。
浅野氏は、「戦争法を廃止させるために、『国民連合政府』が必要。そのために現在、各界の方々と議論を重ねている。また、市民の動きの中から声が上がった『2000万人署名』には、全力で協力していきたい。しかし、成立した法律を廃案に追い込むのは、簡単なことではない。圧倒的多数の与党と現在の野党勢力の力関係を変えていく必要がある。そのためには、『野党共闘』の声を皆さんと共に大きく上げていきたい」と話した。
ユニークなイベントとして、候補者に質問を書いたメモを箱の中に入れ、「くじ引き方式」で質問を選ぶ「くじ引き質問大会」も行われた。選ばれた質問を書いた人には、プレゼントもあるという「新春」ならではの企画となった。
「野党合意、野党共闘について、民主党はどこまで本気で取り組む気があるのか」といった今回のパーティーの「肝」ともいえるストレートな質問も、小西氏に投げ掛けられた。これに対し、「安倍政権と全面対決をするということは、民主党としても公式見解を出している。しかし、岡田代表が正式に発表しているように、共産党と『国民連合政府』を組む、また『野党共闘』するということは、残念ながら戦略として今のところ入っていない。なぜなら、『国民連合政府』を作らなくても、安倍政権を倒すことができるからだ。まずは、参院選で野党が過半数を取り、問責決議を可決する。問責決議は、政権に対する不信任を意味する。こうした方法で倒れた内閣は、過去にいくらでもある」と説明した。
「われわれ、市民ができることは?」の質問に対して、浅野氏は、「自公の候補を追い込むには、まずは参院選。現職で、自民党の議員が千葉選挙区には1人いる。しかし、今回の選挙では、自民に1議席も取らせないといった姿勢で、市民の皆様にも夏までの半年間、活動を続けてほしい。私も皆様と共に闘っていきたい」と話した。
パーティーの最後には、「民主主義ってなんだ?」「これだ!」のコールや、「野党がんばれ!」「野党は共闘!」などと参加者が声を合わせた。散会後も会場に残って、市民らと熱心に話す両候補の姿があった。浅野氏はこの日、3人の子どもを同建物内の保育室に預けての参加となり、会場を出た後は、すっかり母親の顔になっていた。