来月に聖公会の東南アジア大主教になる西マレーシアのング・ムーン・ヒング主教は、マレーシアの諸宗教・民族の多極化が「非常に重大な段階」に達したと警告した。
同主教がこの発言を行ったのは、同国の主なキリスト教諸教派をまとめるエキュメニカルな団体であるマレーシアキリスト教連盟が主催したクリスマス夕食会でのこと。
「宗教や民族の多極化が非常に激しくなっており、今日ではそれが非常に重大な段階に達している。むごい爆発が起きる前に、それを緊急に抑えて食い止める必要がある」と同主教は語った。
マレーシアは多言語・多文化・多宗教の連邦国家で、イスラム教が国教でありながら、他の宗教にも信教の自由が保障されている。キリスト教の存在が大きいのに加えて、同国には多くの仏教者やヒンズー教徒がいる。
ヒング主教は自らの演説で、「異なる共同体が持つ多様性の尊重」がなければ、「この国は崩壊してしまうだろう」と警告した。
「私たちの国が持つ強さは、これまでそうだったように、多民族・多宗教・多言語社会であることだ。もしこれが揺さぶられれば、この国は崩壊する」と同主教は述べた。
ヒング主教はマレーシア政府に対し、「これを最優先課題に据えて、全ての共同体の指導者たちと共に活動する」よう強く求めた。
同主教は「全ての利害関係者との十分な論争や議論もなしに拙速に導入されている法律」について警告した。これは、明らかな「安全保障の領域」にいた場合に、正当な理由なしに誰でも逮捕できる権力を国家安全保障会議に与える新しい安全保障法に対する非難として、幅広く報じられた。
「宗教団体として、私たちは誘惑という悪について、そして自分たちは善を行っているのだと信じてその悪に屈してしまうという誘惑について知っている」と同主教は続けた。「私たちがテロリズムと闘うとしても、彼らを打ち負かすための法と秩序を放棄してしまうという誘惑に負けてはならない」
「私たちは抑制を助言する。法と秩序が停止した風潮の中で私たちの国を活動させないように」とヒング主教は述べた。「それは無政府状態や混沌につながってしまうだろう。そしてそれこそがまさにテロリストたちの求めていることなのだ。彼らの思うつぼにはまって、テロリストたちが望むものを与えたり、彼らが欲していることを成し遂げたりしないように」
この夕食会に出席したポール・ロウ・セン・クアン首相府相は、この演説に反応し、「一つのマレーシア」という考え方に対して、政府はたとえその行動がこれと矛盾しているように見えたとしても、それに対する責務を負っていると述べた。
「時折、一つのマレーシアという精神と矛盾した政策を実施しているようにさえ見えることがある」と同首相府相は述べた。「しかしながら、私は一つのマレーシアという精神を信じている。なぜならそこには、そのアイデンティティーを私たちにもたらす希望があると、私は信じているからだ」