東南アジア聖公会のボリー・ラポック大主教は、マレーシアのマッジル・ビン・カリド文部大臣がキリスト教徒とユダヤ教徒について最近行った「分裂を起こす扇動的な発言」について謝罪を求めた。アングリカン・コミュニオン・ニュース・サービスが8日伝えた。
マレーシア教会協議会(CCM)が5日に発表した声明文で、ボルネオ島クチン主教であるボリー大主教は、「サラワクおよびブルネイ聖公会のメンバーとして、私たちは文部大臣が行った発言に深い憂慮を表したい」と述べた。
同大臣の発言は、内部告発のためのあるウェブサイトで公表された、自身の汚職疑惑への追及に対するもの。この疑惑はイスラム教徒を分断させるための、キリスト教徒とユダヤ教徒による企みの一環であるとの内容だった。
同大臣は、「ユダヤ教徒とキリスト教徒は、月と星が存在する限り、世界の終わりがまだここに来ていないうちは、ムハンマドに従う者たちは混乱し、自ら分断すると誓って言った。これが、ユダヤ教徒とキリスト教徒の誓いである」などと述べた。
ボリー大主教は声明文の中で、「そんなことはない」と強調して答えた。
「サラワクの人口の70パーセントが非イスラム教徒であり、マレーシアのキリスト教徒の60パーセントがサバやサラワクに居住していることは事実である。そこでは、キリスト教徒やイスラム教徒、そしてあらゆる宗教者が、30を超える民族共同体をなして、マレーシアが形成されるよりもずっと前から、何世代にもわたって平和と調和のうちに暮らし、一緒に共存してきた」
「彼らの文化的および宗教的な多様性の中の一致は、とりわけサラワクの人たちの間で、第二次世界大戦や共産主義者の暴動、そしてコンフロンタシ(1963~66年までのインドネシアとマレーシアの対立)といった最も激動の時代の試練さえも生き延びてきた」
「この一致は、私たちの未来の世代の利益と福祉のために保たれねばならないばかりでなく、神の賜物として受け入れられ、守られねばならない」とボリー大主教。「だから、大臣がこんなけしからぬ疑惑を口にしてしまったことは、全く遺憾であり、明らかに無神経であり、大いに誤解を招くものである」
「歴史の記録によれば、1世紀以上にわたって、キリスト教徒は教育や公衆衛生、そして国家建設の分野で私利私欲を捨てて先駆的に貢献してきた。政治的な利得のために、国民の一致と調和を犠牲にして、仲間である市民を中傷し、悪霊化しても刑罰を受けないという非合理的な傾向は止めなければならない」
同大主教はこう続けた。「教育機関までもが政治的な脱線を免れていないというレベルにまでこの国が落ちてしまったことは悲劇的だ。学生の教育を任されている全ての人たち、とりわけ文部大臣の責任の重要性をいくら強調してもし過ぎることはない」
「もちろん、彼らは、若い人たちの心が、学校や大学で誤った導きを受けたり、私たちの多元的な社会に不和の種をまくような、どんな形の偏屈にもさらされたりしないよう、必ず守られねばならない。子どもたちが活躍するために、最良かつ可能な環境が必要なのだ」
「キリスト教徒として、私たちは連邦憲法にある通り、国家を支配する法律に沿って生き、私たちの共同体全ての中で、平和と正義、そして愛を促すよう努力しているのだ。大臣は謝罪すべきだ」