気候変動によって引き起こされる損失と損害が、COP21で信仰に根ざした団体によって提起される要点の一つとなっている。COP21で今月初めに開かれているパネル討論とデモは、この問題が持つ多くの側面に光を当てるものとなった。世界教会協議会(WCC)が7日に公式サイトで伝えた。
ドイツのプロテスタント開発救援機関である「ブロット・フュア・ディ・ヴェルト(世界のためにパンを)」は3日、COP21のドイツ展示館で考察と討論の場を促進した。参加者たちは環境に関する損失と損害の問題に焦点を当てた。
ブロット・フュア・ディ・ヴェルト会長のコルネリア・フュルクルグ・ヴァイツェル牧師・博士は、WCCやルーテル世界連盟の加盟教会などがつくる緊急支援・政策提言組織「ACTアライアンス」とドイツの環境問題研究・政策提言団体「ジャーマンウォッチ」との協力で制作された研究を紹介することで討論を開始した。この研究は方針説明書の採択へとつながった。
国連の専門機関や科学的研究、保険業界によって提供されたデータに基づき、この研究は、異常気象や干ばつ、洪水、海面上昇、そしてその他のゆっくりとした兆候の事象に関連した経済および経済以外の損失がすばやく増大していると結論づけている。
危険や強靭(きょうじん)さの低下の両方に対するより高い露出によって、これらの気象による影響は、より貧しい国々においてより強く伝わっている。
「農業や水の安全、漁業や沿岸の産業基盤に最も影響を与えている深刻な経済的損失を別としても、この研究は気候変動によって引き起こされる、海面上昇による立ち退きや移住、そして領域や文化遺産の損失を確認している」とフュルクルグ・ヴァイツェル博士は語った。
「2013年だけでも、2200万人が環境の危害によって立ち退かされたが、これは武力紛争によるものの3倍も多い」と同博士はノルウェー難民協議会の2014年報告書を引用して付け加えた。
パネル討論のもう一人の参加者である、ガンビアの環境・気候変動・森林・水・野生生物大臣、ホン・パ・オウスマン・ジャルジュ氏は、(気候変動の影響に対する)適応策だけでは不十分だと語った。
「気候変動が引き起こす損失と損害には説明のつかない影響がある。気象によって引き起こされる損失であなたがたの経済の半分が影響を受けたら、どうやって適応するのか?」と同氏は問い掛けた。
パリにおけるエキュメニカルな要求は、未来の気候リスクの予防・削減・移転のための強靭な政治的基盤を持つために、損失と損害を合意の中に含めることである。そのような配慮のパターンは2013年のCOP19(会場:ポーランドの首都ワルシャワ)で設けられ、「気候変動の影響に関連した損失と損害のためのワルシャワ国際メカニズム」という提案をした。
フュルクルグ・ヴァイツェル博士はこう説明した。「福音に基づく団体としての私たちのはっきりとした焦点は、世界で最も貧しく最も脆弱な人たちです。彼らは自らの命と暮らしを脅かす気候リスクにますますさらされているのです」
「私たちは皆、気候リスクを防ぎ、より良く管理するために行動を起こさなければなりません」と同博士は付け加えた。
次の日の12月4日、「気候変動における正義のために今こそ行動を(ACT Now for Climate Justice)」の運動家たちがCOP21の会場の真ん中で真に迫った「ダイ・イン(模擬死抗議行動)」を演じ、気候変動の最前線にある国々が直面している、失われた命、失われた機会、そして取り返しのつかない損害を表すデモを行った。
「気候変動における正義のために今こそ行動を」は、ACTアライアンスの主導によるもの。ACTアライアンスは、教会を含む、137の信仰に基づく組織の連合体で、100を超える国々で共に活動し、貧しく周縁に追いやられた人たちの生活に、前向きで持続可能な変革を創り出している。
クリスチャン・エイドの国際政策提言顧問であるマリアナ・パオリ氏は、このデモ行動はパリの交渉者たちに対する圧力を増やすのを助けるために、戦略的に重要であったと考えている。それは彼らが交渉において損失と損害を必ず含め、ワルシャワ・メカニズムを最終的なパリ合意に固定させるようにするためだ。
パオリ氏によると、この運動家たちは、気候変動のために被害を受け、立ち退かされ、あるいは死ぬ、何百万人もの人たちを代弁する、気候に関連した影響の画像を展示することで、COP21で自らの声がはっきりと聞こえるようにしたという。
ルーテル世界連盟のCOP21代表の一人であるプラニタ・ビスワシ氏にとって、損失と損害の現実は、インドにおける彼女の日常生活の一部だ。「私たちは、水がなくては命は存在できないことをみんな知っています。でも、インド南部で今日大洪水で溺れている何千人もの人たちはどうなのでしょうか?彼らがいま直面している損失と損害に対して、誰が補償をするのでしょうか?」と彼女は問い掛けた。
「補償とまではいかぬとも、政治指導者たちは自分たちのぜいたくな家を開けて、これらの災害に直面するには全く値しない、脆弱な人たちに、避難場所と食糧を与える用意ができているのでしょうか?」とビスワシ氏は付け加えた。
パリで開かれている国連の気候会議は12月11日まで続く。このサミットの第2週は、確固とした気候に関する合意を築くことを目的とした、20年にわたる過程の中で、決定的に重大な期間だと、多くの人たちは見ている。