日本バプテスト連盟(埼玉県さいたま市)は20日、パリ同時多発テロを受けて「テロの犠牲者を悼み、祈りと思慮深い対応を求める理事会声明」(19日付)、18日には、「平和と人権の危機に際して 性差別問題特別委員会『戦後』70年の言葉」(10月10日付)を公式サイトで発表した。
理事会声明は同連盟の諸教会・伝道所に宛てたもので、ペトロの手紙一4章7節から9節、「だから、思慮深くふるまい、身を慎んで、よく祈りなさい。何よりもまず、心を込めて愛し合いなさい。愛は多くの罪を覆うからです。不平を言わずにもてなし合いな さい」を引用し、パリでの同時多発テロを受けた事態の中で、「突然の悲劇に襲われ生命を奪われた犠牲者とその家族、そして今も日常生活を脅かされている人々のために主の慰めと護りを祈りましょう。いかなる理由があろうとも決して許されない暴力行為に対して憤りを覚えるとともに、それを生み出す人間の罪性を主に告白し悔い改めの祈りをささげましょう」と呼び掛ける一方、難民支援対策が著しく後退することを憂慮している。
その上で同声明は、▽さらなるテロ攻撃で犠牲者が生じないように、▽報復に報復が重なり世界戦争の勃発を招かないように、▽命の危機を逃れて国境を越えてくる人々を受け入れる間口が閉ざされないように、▽対テロ政策で日本政府が米国を中心とする軍事活動に同調しないように、▽日本政府が日本国内で生きる人々の権利を侵害したり制限したりしないように、特にイスラム教信仰を背景とする人々に対する差別や弾圧が起こらないように、▽対立を生み出す根を見つめ、その解決と克服のため国際社会が努力できるように、と熟慮し祈ることを呼び掛けている。
一方、性差別問題特別委員会による「『戦後』70年の言葉」は、「(戦時中および戦後70年の)差別と暴力は過去のものではなく、現在に至るまで進行中であることを覚え、深く憂います」とした上で、「従軍慰安婦」について、「苦しみ続けてきたハルモニたちの叫びが掻(か)き消されないようにその声に深く傾聴し、日本の犯した罪を忘れません」と言明している。
また、沖縄について、1879年の「琉球処分」以後、沖縄戦や米軍基地、米兵による女性に対する性暴力によって、「まだ『戦後』を経験したことなく『戦中』のままです」と述べ、「私たちは、今もヤマト(本土)に住むものによって痛められ傷つけられている沖縄に目を向け、その声を聴き、沖縄から真の平和が始まることを祈り求めます」としている。
セクシュアルマイノリティーについても触れ、「いわゆる先進国の共通理解からは大きく遅れ」ていると日本社会の問題点を指摘しつつ、「セクシュアルマイノリティーであることは、罪ではありません。病気でもありません。勇気をもって命がけでカミングアウトする声を、真剣に丁寧に聴かねばなりません。私たちは、一人一人の性を受けとめ、喜び、尊重する社会を創っていきたいと願います」と述べた。
さらに、日本の教会が女性やセクシュアルマイノリティーへの性的差別の問題を抱えており、セクシュアルハラスメント(性的暴力)に至ることもあると指摘した。その上で、「私たちは、男・女という性別を先行させるのではなく、一人一人がその人らしく、生き、神の恵みに応え、キリストに従う歩みをすることができる教会を求め、形成していきます」と表明した。
最後に声明は、「社会全体が力への幻想によってこわばっていく中で、 私たちは、それに抗して、一人一人がかけがえなのない存在として尊重され、自由にその人らしく生きることができる、大らかでしなやかな社会と教会の実現を願います。そして、今、傷つけられ弱くされ、呻(うめ)いている人々の痛みを受けとめ、共に担いながら、キリストにある真の平和に向かって歩んでいきます」と結んでいる。