聖地イスラエルの写真を和紙にプリントして紹介する写真展「バイブルランドイスラエル」が、日本基督教団銀座教会の東京福音会センターで開催されている。日本の手すき和紙が持つしっとりした雰囲気の表現性と、イスラエルの風景が見事にコラボレーションした作品25点を展示。イスラエルの日常の風景を撮影した写真約60点を展示する「イスラエルの風」も合わせて開催されている。
写真展を主催する「ギャラリーイスラエルの風」の主宰者であり、展示されている写真の撮影者でもある平岡真一郎さん(66)は、明治時代から続くクリスチャンの家庭に生まれた3代目のクリスチャン。もともとはコンピューター会社のエンジニアだったが、かねてから興味を持っていたイスラエル旅行のツアーに、友人からの誘いで参加し、イスラエルの魅力に取り付かれてしまうことになる。
平岡さんが初めてイスラエルを訪れたのは1973年5月。ちょうどイスラエルの独立25周年を祝う行事が行われていた時だった。留学時に見た米国の大自然も素晴らしかったが、聖書の舞台が広がるイスラエルの風景は、それとは比べられないほど別格だったという。ただ、イスラエルに魅了されたことを知ったのは、イスラエルに滞在していた時ではなく、帰国した時だった。飛行機の上空から東京の明るい光が見えてきたとき、周りの乗客たちが帰国したことを喜ぶ中、平岡さんはなぜかガッカリしてしまったという。「どうしてそんなにガッカリしたのか最初は分かりませんでしたが、自分が聖地イスラエルに魅了されてしまったことに気付いたのです」
その後も何度かイスラエルを訪れ、10年程前に会社を辞めて独立。それからはイスラエルの映像を日本に伝えることを自分のライフワークとして、毎年取材に行くようになった。当初はプロのカメラマンが同行していたが、3、4年前から写真を和紙でプリントをするようになり、自分で感じたものは自分で撮らなければうまくプリントできないと、それ以来自分で撮影するようになったという。
今回展示されている「聖都エルサレム・天からのスポットライト」や「シオンの朝日」といった作品では、自然の光が建物を美しく照らしている。こうしたチャンスに巡り合うためには何日も待つのかと尋ねると、「自分はプロではないし、そのような写真の撮り方はあまりしない」という意外な答えが返ってきた。
和紙にプリントすることを思いついたのも、決して特別なことではないと話す。ただ、和紙の性質上プリントすることが難しく、またプリントすることができても色がうまく乗らないこともあるという。しかし、うまくいったときは、通常の光沢紙では到底表現できない独特な風合いを持つ作品に仕上がる。実際に和紙にプリントされた写真を見ると、写真でありながら絵画のように感じる。和紙を使うことで何よりも気に入っているのは、「シャッターを切った瞬間に感じた空気を感じることができる」ことだという。
「イスラエルというと、紛争を思い浮かべる人も多いと思うが、私は紛争を思い浮かべない。実は多面性を持つ国で、学ぶところがいろいろあるのではないかと思っている」。写真や映像では、実際に行って感じる空気に触れることはできないが、「少しでもイスラエルの風を感じてもらえればうれしい」と平岡さん。「2月から3月にかけて美しい花が咲き乱れるイスラエルは本当にきれい。戦争のシーンだけを見て、(イスラエルへ)行くのはやめようと諦めてしまうのはもったいない」と、和紙にプリントされより一層やさしく見える聖地イスラエルの写真を背に語った。
写真展は27日(日)まで。会期中は無休。時間は午前11時から午後6時半まで(27日のみ午後0時半から)。入場無料。会場は銀座教会(銀座4−2−1)1階の東京福音会センター。問い合わせは、電話(080・2075・4112、平岡)で。