信じる力はデモが持つ力
立教大学大学院文学研究科の西谷修特任教授は、自らはクリスチャンではないがキリスト教とは縁があるとし、経済産業省の前で8月27日に呪殺祈祷僧団四十七士(JKS47)が行った“呪殺”は、信じる力によって願い、思い、そして消すことであり、それはデモが持つ力だと語った。
西谷教授はまた、「安倍政権は呪いの集団」と述べるとともに、中野晃一著『右傾化する日本政治』(岩波新書、2015年7月)に触れつつ、安倍政権は「日本会議、神道議員連盟が支えている」と指摘。「われわれの思いと願いを結集していくと何が起こるか分からない。これによって確かな信(しん)が生じる。その信を結集してこの状況を突き破っていきたい」と語った。
上智大学総合人間科学部の澤田稔教授(教育学)は、「学生たちの運動は、われわれの運動を間違いなく引っ張っている。彼らはスッと行動して、自分の言葉で語る。あのように自分の言葉で語って連帯していく姿は人を引き付けると思う」と語った。
そして澤田教授は、龍谷大学の社会学者である岸政彦氏が図書新聞(8月1日号、特集「戦争法案に反対する」)で書いた記事「アイドルと蛆虫(うじむし)」を一部抜粋して引用し、それを、大学の授業料を稼ぐために軍隊に入ることを考える米国の大学生向けに流れている米陸軍のプロモーションビデオと重ね合わせた。
その上で澤田教授は、「上智や立教に来るような学生は、こういった戦火や次の戦争には直接巻き込まれずに済む人々のほうが多いかもしれない。自分たちとは違う社会的に不利な条件を抱えている他者への想像力が今問われている。特に教育は、何よりも他者への想像力を豊かに持てるような子どもたちを育てるので、自分たちには降りかかってこないことでは済まされない」と語った。
暴力否定し、愛と平和実践したキリスト
名古屋学院大学経済学部の阿部太郎教授は、同大平和学研究会の「安全保障関連法案に反対する声明」が出された経緯と内容を説明し、「この法案の廃案に力を尽くしたい」と語った。
西南学院大学国際文化学部の宮平望教授は、安倍晋三首相が4月に米国議会で行った演説で、国家安全保障の周辺に人間安全保障が付け加えられる位置付けになっていると指摘。また、「積極的平和(proactive contribution to peace)」は紛争に対する「挑発的貢献(provocative contribution to conflicts)」という印象が拭えないと語った。
同大神学部の須藤伊知郎教授は、「安保法制に対する西南学院大学教員有志の声明」を一部抜粋して読み上げ、7月にこの声明が発表された日に開かれた緊急集会で、中国人留学生が語った発言を紹介。「中国の若者は日本が大好きだが、安倍政権になっておかしな方向に進み、昔の日本に戻ってしまうのでは。どうか平和な日本であり続けてほしい」と語ったと伝えた。
また、福岡で若者たちが「福岡ユース・ムーブメント」を立ち上げ、「安保法案いけんば」などと博多弁で呼び掛けていることや、国会前で西南学院大学の学生がSEALDsの集会で語った言葉を紹介した。そして、九州でも動きが始まっていると伝え、「西南よ、キリストに忠実なれ」という建学精神にあるキリストは「真の平和の君である。暴力を徹底して拒否して、愛と平和を説いて実践した。この十字架に付けられたイエス・キリストに忠実でありたい」と語り、集会の参加者との連帯を呼び掛けた。
戦後日本の原点を受け継ぐ
東京基督教大学の山口陽一教授は、8月29日に行われた市民集会での自らの発題「東京基督教大学教職員有志はどうして安全保障関連法案に反対する声明を出したか」に触れ、声明の冒頭にある「剣を取る者はみな剣で滅びます」(マタイ26:52)の聖句について、「この短い言葉は常にキリスト教平和主義で語られるわけだが、剣を取らないと言われた主は、十字架という方法で全ての問題の解決を図られたというのが私たちの確信だ。それに従うところの平和主義でありたいと思う」と語った。
さらに山口教授は、カトリック信者であった田中耕太郎文部大臣が、1946年6月28日に第90回帝国議会衆議院本会議で行った答弁を引用。「何もないところからこういうことが起こったのではない。あの戦争の悲劇の中からこういう言葉が出てきた」と語った。そして田中大臣が同年7月15日に衆議院憲法改正案委員会の逐条審議の答弁で述べた言葉を引用し、「こういう戦後日本の原点を私たちは受け継ぎ、守り、実質化していく責任がある」と述べた。
最後に、自民党改憲草案で全文削除された日本国憲法97条(基本的人権)を受け継ぎ守っていくことを訴え、「2000年と教会が綿々と信仰をつないできたことを覚えながら、連帯に関わっていきたい」と結んだ。
恵泉女学園大学の川島堅二学長は、8月26日に開かれた大学有志による合同記者会見での自らの発言を紹介。108大学が声を上げたとはいえ、日本には大学が800以上あり、「私の実感としては、(安保法案反対を訴える)大学人はサイレント・マジョリティー」だとして危機感を覚えると語った。「国会前に行けば、われわれはもっと謙虚に、SEALDsをはじめとする大学生たちの運動にこそ学ばなければならないと思っている」と述べ、立教や上智などのキリスト教学校の連帯に励まされ、エキュメニカルな連帯を発信して法案を廃案にしていきたいと結んだ。
言葉の蹂躙は立憲主義の破壊
フェリス女学院大学の渡辺信二教授は、ヨハネによる福音書1章1〜3節で始まる連帯のメッセージを読み上げた。その中で渡辺教授は、今や言葉が完全に権力者によって蹂躙(じゅうりん)されており、言葉を蹂躙すれば、それは立憲主義の破壊であり独裁への道にほかならず、言(ことば)である神の冒涜(ぼうとく)だと述べた。そして、「言葉を蹂躙する安倍政権を倒さなければならない」と述べ、「神は混乱の神ではなく、平和の神です」(1コリント14:33)と言い、「立ち上がりましょう。真に祖国を愛する者たち」と呼び掛けた。
終わりに、上智大学国際教養学部の中野晃一教授(政治学)が閉会のあいさつをし、「一人一人が、矢印となって、ベクトルとなって、『今の日本が、あるいは世界が、平和に包まれているなんて思っていない。だけども、もっと平和な社会をつくりたい』、そういった思いで、これから運動をしていくことができれば、そして大学、ましてやキリスト教系の大学が、そういったところで力になることができれば、本当に幸せなことだと思う」と結んだ。
なお、この集会にはこの他に、国際基督教大学教職員有志代表(伊藤辰彦、稲正樹、千葉眞の各氏ほか呼び掛け人)、明治学院大学教養教育センターの永野茂洋教授、「安保関連法案に反対する関西学院大学有志の声明」呼び掛け人で同大宗教主事の山本俊正教授から連帯のメッセージが送られた。
■ 立教・上智有志が安保法案反対で共同企画:(1)(2)