上智大学(東京都千代田区)と東京基督教大学(千葉県印西市)の教職員有志はそれぞれ、安全保障関連法案に反対する声明を7月31日付で発表した。
上智大の教職員有志は声明で、安保法案の廃案を求め、「私たちの上智大学は、キリスト教精神を基底とし、真実と価値を求めて、人間形成につとめることを教育理念の中心に据えています。人格の尊厳と基本的人権の尊重を脅かす戦争への参加を違憲立法で可能にしてしまうことは、『人を望ましい人間へと高める最上の叡智(えいち)』(Sophia)を追究する本学の使命とおよそ相容れるものではありません」と述べている。
また、「満州事変から軍靴の響きが日本国内でも日増しに強まっていた1932年春、カトリック信者の学生数名が軍事教練での靖国神社の参拝を拒否したとして軍部が配属将校を引き上げ、上智大学が存亡の危機に立たされるということがありました。信教の自由、学問の自由への弾圧が強化されるなか、上智大学もまた学生を戦場に送っていくことになりました」と、その歴史的背景に触れている。
そして、「我々、上智大学教職員有志は、『上智の精神』を胸に立憲主義と民主主義の擁護を求める全てのソフィアン(上智大学生・卒業生ら)とともに、この強行採決に抗議し、同法案を廃案に持ち込むことを要求します」と結んでいる。
一方、東京基督教大の教職員有志は声明で、聖書から「剣を取る者はみな剣で滅びます」(マタイ26:52)を引用し、同大の前身である1881年設立の偕成伝道女学校が1940年に戦争のため、日本基督教女子神学専門学校と合併し、一度その歴史を閉じたことや、1946年に当時の田中耕太郎文部大臣が衆議院憲法改正案委員会の逐条審議の答弁で、「戦争放棄をなぜ致しましたかと申しますると、西洋の聖典にもございますように、剣を以って立つ者は剣にて滅ぶという原則を根本的に認めるということであると思うのであります」と述べたことに言及している。
また、イザヤ書2章4節「彼らはその剣を鋤(すき)に、その槍(やり)をかまに打ち直し、国は国に向かって剣を上げず、二度と戦いのことを習わない」を引用し、「私たちは、恒久的な平和は武力によってはもたらされないと考えます。後方支援の名の下に戦争に加担して殺戮(さつりく)の連鎖に加わってはいけません」としている。
そして、「いたずらに危機感を煽るのではなく、冷静な対話を貫く外交こそ最強の抑止力です」などと述べ、「為政者が憲法を尊重し擁護することを強く希望します」と結んでいる。