【CJC=東京】バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇フランシスコは10日午後3時過ぎ、南米歴訪最後の訪問国パラグアイのアスンシオン国際空港に到着した。空港には、オラシオ・カルテス大統領が教皇を出迎えた。雨模様にもかかわらず、子どもたちのコーラスや民族舞踊などが到着の行事を彩り、空港から市内に向かう道のりには市民の熱い歓迎が続いた。
最初に大統領官邸を表敬訪問した教皇は、カルテス大統領と個人会談の後、官邸内で行政・律法・司法の各分野の代表と同国の駐在外交団らに挨拶した。
教皇は、独立直後の歩みから、今から少し前の時代に至るまで、パラグアイは恐ろしい戦争とその苦しみを体験してきたと同国の歴史を回想。人民間の兄弟愛を引き裂くほどの悲劇の中で、パラグアイの人々、特に残された女性たちが国の未来を背負って努力してきたことを称賛した。
パラグアイ訪問2日目の11日午前、教皇はアスンシオン市内の小児病院を訪問。診療科や、集中治療室、入院病棟を回りながら、入院中の子どもたちや付き添いの家族らを励ました。
続いて教皇ミサの会場となった、アスンシオン東南のカアクペの聖母巡礼聖堂に向かった。同聖堂は、パラグアイの信者にとって最も重要な巡礼地。到着した教皇は、まず聖堂内に入り、聖母像を安置した祭壇前で沈黙の祈りをささげた。
続いて教皇は、巡礼聖堂一帯を埋め尽くす信者たちと共に、無原罪の聖母にささげるミサを行った。
説教で教皇は、イエスの馬小屋での誕生から、エジプトへの逃避、そしてイエスの十字架上での死に至るまで、聖母マリアが体験した数々の試練を思い起こしながら、「多くの困難の中で、神に耳を傾け、生きることを学んでいった母」としての姿を示した。カアクペの聖母巡礼聖堂がパラグアイの人々の歴史を大切に刻んできたように、マリアは、どのような難しい時にあっても常にその子らのかたわらにいると強調した。
教皇は12日、首都アスンシオン郊外のバニャド・ノルテ地区へと向かった。同地区は、アスンシオンの貧しい居住区の一つで、約10万人が生活している。現在、行政とカトリック教会による様々な支援プロジェクトが行われており、中でも修道会「イエズス会」は積極的に教育活動に奉仕している。
この地区の司牧は、点在する13の小さな礼拝堂を中心に展開しており、教皇と住民の出会いは、その中の一つ、フアン・バウティスタ礼拝堂とその付属の運動場で行われた。この集いでは、約2千人の参加者を代表し、住民の女性2人が生活の現実や信仰について語り、教皇はその言葉に時折うなずきながら、真剣に耳を傾けた。
住民への言葉で教皇は、ここ数週間の悪天候と大雨について触れ、雨の被害を懸命に乗り越えようとしている人々に、「この闘いの中でも、皆さんは微笑みと、喜び、希望を失うことはありませんでした。多くのやるべきことの中にも、連帯を失わず、むしろそれは連帯を成長させました」と語った。
「連帯の無い信仰は、死んだ信仰です。それは、キリストの無い信仰、神のいない信仰、兄弟のいない信仰です」と話した教皇は、これからも「宣教者」また「人々、特にお年寄りと若者の隣人」であり続けるようにと、バニャド地区の住民を力強く励ました。
教皇は午後7時40分、アスンシオン国際空港から、アリタリア航空特別機でローマに向け出発、南米3国歴訪から帰国の途についた。