世界教会協議会(WCC)の代表団が、8月初めに広島と長崎へ巡礼の旅を行う。また、「今日同じような形で、今日もなお何千もの都市を破壊しようとしている国々の政府を訪問する」と、WCCが6月26日に公式サイトで発表した。
WCCはこの巡礼について、「70年前に最も致命的な兵器によって壊滅させられた2つの都市へ教会指導者たちのグループが旅をする」「異例の巡礼」であるとしている。
1945年8月6日と9日、広島と長崎にそれぞれ原爆が投下されたが、その後も40カ国の政府が依然として核兵器に依存している。9カ国が核兵器を保有しており、他の31カ国が自国に代わって米国に核兵器を使わせようとしている、とWCCは説明している。
WCCによると、これらの国々のうちの8カ国の教会指導者たちが広島と長崎へ巡礼を行い、その生存者たちに耳を傾け、地元の教会と共に祈り、この2つの都市の苦境について他の宗教者たちと考える。また、主教や監督、教会の議長らが広島と長崎から行動のための呼び掛けを持ち帰るという。
WCCによると、鍵となる一歩は、「法的な隔たりを閉じ」て核兵器の公式な禁止を確立し、新しい政府間の誓約に加わるよう、彼らの各国政府に強く要求することであり、「この人道的イニシアチブは既に110カ国の支持を得ている」という。
「原爆投下70周年は重要な一里塚だ」と、WCC国際問題教会委員会(CCIA)のピーター・プローブ局長は述べた。「それが時宜を得ているのは、1945年のあの攻撃の生存者たちのほとんどが今や80代だからだ。『決して二度と』という彼らの叫び声は、依然として聞かなければならない。それが緊急なのは、核保有国が皆、自国の核兵器を約束通り廃絶する代わりに、それらを近代化させているからだ。それでも希望があるとすれば、核兵器を禁止するために国際的な多数派が増大し形成されつつあり、WCCの加盟教会も関わっているからだ」
WCCは、「この巡礼に関わっている8つの加盟教会は、世界で最も破壊的なこれらの兵器に対して立ち上がる上でよい地位を占めている。彼らの政府――米国、ドイツ、日本、韓国、カナダ、オランダ、ノルウェー、パキスタン――は皆、核軍備の撤廃を公言しているが、まさに70年前にこのような破壊を引き起こした兵器に依存し続けており、今日、人類に脅威をもたらしている」と指摘する。
また、「自国の核兵器を保有している米国、パキスタンを除いて、これらの国々の政府は敵に対して米国がその核兵器を使うための備えを持っている。4カ国がこの冷戦のような態勢をNATO(北大西洋条約機構)の加盟国として受け入れている。日本と韓国の2カ国は、太平洋における米国の同盟国としてそれをしている」と言い、「これらの国々の教会は、核兵器に反対するエキュメニカルな政策を適用し、建設的な圧力を、今日、自国の政府に行使する上でよい地位を占めている」と述べている。
WCCはまた、「最近の出来事によって今年の記念はさらに重要な意味を持っている」と言う。「核兵器に関する美辞麗句がウクライナをめぐる危機の中で使われている。そして5月、核兵器に反対する人道的イニシアチブを支持している大多数の国々に対する核兵器保有国の強い抵抗の中で、国際連合で重要な軍備管理の会議(核拡散防止条約(NPT)再検討会議)が失敗した」と述べ、2つの出来事を挙げた。
また、「人道的イニシアチブは、それらの政府がしばしば支持している諸価値と首尾一貫している」としつつも、「しかしそれらの政府は、核武装した同盟国である米国と共にこのイニシアチブに反対して共に立つ義理を感じている」と指摘した。その上で、次のような問題を提起した。
「最近、WCCの加盟教会を含む市民社会の幅広い輪がますますこれらの政府に対し、それらの教会指導者たちが日本で耳にするであろう問いを投げ掛けている。『他の大量破壊兵器が全部禁止されているのに、なぜ核兵器はいまだに合法なのか?』と」
WCC副総幹事のイザベル・アパウォ・フィリ博士は、「この巡礼は、今日いまだに核兵器に依存している国々の政府に対して、70年前の広島攻撃で始まったジレンマについての道義的・霊的な批判をもたらすことで終わるだろう」と語った。そして、「目標は、外交政策の役人たちがその身近にある固有の機会が持つ真価を認めるのを助けること、つまり、危険で不正かつ不安定な現状維持を永続化させるよりも、むしろ多数派と提携して共通の善を促すことだ」と述べた。
WCCによると、日本や他の7つの核依存諸国へのミッションは、WCCが2013年10、11月に韓国・釜山で開いた第10回総会で、クリスチャンや善意ある人々に参加を呼び掛けた「正義と平和の巡礼」の一部であるという。
代表団のメンバーは、WCC中央委員会副議長で代表団の団長を務める米合同メソジスト教会のメアリー・アン・スウェンソン監督、WCCアジア議長で韓国基督教長老会総会のチャン・サン牧師、ドイツ福音主義教会連盟の総裁監督であるハインリヒ・ベドフォードストローム監督、WCC北米議長でカナダ聖公会のマーク・マクドナルド主教、ノルウェー国教会のトル・ヨルゲンセン監督、オランダ・プロテスタント教会のカレン・ファン・デン・ブロエケ牧師、パキスタン教会のサミュエル・アザリア主教、米合同メソジスト教会のエキュメニカル担当者でWCC国際問題教会委員会(CCIA)の委員であるスティーブン・シドラック牧師となっている。
なお、WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は、昨年12月に来日した際、広島と長崎の平和記念式典に関し、「毎年の記念式典、それも特に70周年記念である来年の記念式典に参加する道を見つけるよう、ぜひとも世界中の諸教会に促したい。そこで、私たちもWCCとして来年どのように代表を送ることができるか検討中だ」と明かし、「私は既にそれを幾つかの加盟教会、それも特に出席したがっている米国の加盟教会と議論した」と述べていた。