スポーツ選手が試合の後に十字を切る姿をテレビでよく目にする。普段、それらの場面がニュースで取り上げられることはないが、試合後に「100%JESUS」というメッセージを全世界に発信することになったあるサッカー選手の行為が、「布教活動」に当たるのではないかと指摘される出来事があった。
6日にドイツのベルリンで行われた、欧州サッカー連盟(UEFA)主催のUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦で、バルセロナ(スペイン)がユベントス(イタリア)を下して4季ぶり5度目の優勝に輝いた。ブラジル代表でバルセロナに所属するネイマールことネイマール・ジュニアは、この試合の終了のホイッスルが鳴り、勝利が確定した後、ユニフォームを脱いで白いはちまきを額に巻いた。
そのはちまきにはっきりと書かれていた黒文字が「100%JESUS」。講談社が運営するニュースサイト「ゲキサカ」が報じたところによると、このはちまきがフランスで物議を醸しているという。声を上げたのは、フランスの日刊紙「ル・フィガロ」。勝利を喜ぶネイマールが、はちまきを巻いたままで表彰式に臨み、写真撮影に応じたことを「布教活動」だとして、批判を呼んでいると伝えたという。
同紙が指摘した通り、国際サッカー連盟(FIFA)が、試合でのいかなる政治的・宗教的メッセージも禁止しているのは事実。だが、ゲキサカによると、今回のネイマールの行為は試合後のセレモニーで行われたものであって、ブラジルの元審判員レオナルド・ガシーバ氏は「試合後のセレモニーでの行為を罰する方法はない」と、テレビ番組のコメントで解説したという。
サッカー選手だった父の影響を受け、6歳からフットサルを始めたネイマールは、16歳でプロ契約、17歳でトップチームデビューを果たした。18歳の時にアメリカ戦にブラジル代表として初招集されて以降、ブラジルサッカー界の絶対的エースとして活躍を続けている。彼は、自身の半生について語った自叙伝『ネイマール:父の教え、僕の生きかた』(徳間書店、2014年)の中で、神への信仰についていたるところで触れている。
今回問題になったのは試合後のネイマールの行為だったが、試合前にも必ず「宗教的行為」をしていることを、彼は本の中で語っている。それによると、ネイマールは試合前にいつも、移動するバスの中やロッカールームで父親に電話をかける。試合について、家族について、自分に何ができて、何をしてはいけないのかを話し合い、そして最後に一緒に祈りをささげるという。
この本は、ネイマールと父親の交互のモノローグによってつづられているが、それを読むと、ネイマールの信仰は確かに親から受け継がれたものであることが分かる。父親が現役のサッカー選手だったとき、ネイマール一家は交通事故に巻き込まれた。その時の脚のけがが原因となって、父親は引退することになってしまうが、大きな事故であったにもかかわらず、家族の命は守られた。父親はこの出来事を振り返り、「神を信ずる者は救われる」「神が私たちを助けてくださった」「私の人生に必要な苦しみを与えてくださった神に感謝したい」と記している。当時ネイマールは生後たった4カ月だったというが、この父親の信仰を間近で感じていたからだろうか、この事故からしばらくしてネイマールは次のような言葉をよく口にするようになったという。「神はあの日、僕たちを照らしてくださったんだ。あの日以前も、あの日以降も、きっと同じように照らしてくださっているんだよ」。
決勝戦後半、ロスタイム終了直前にゴールを決めたネイマールは、リオネル・メッシ、クリスチアーノ・ロナウドと共に、今大会の得点王になった。23歳という若きサッカー選手が、神の守りの中で、これからさらに活躍することを期待したい。