千葉県木更津市にある小児発達センター「のぞみ牧場学園」。知的障がいのある子どもたちの自立を目指して2003年に設立。現在は40人ほどの児童と共に、昨年設立した18歳以上の障がい者の生活支援のための就労施設「のぞみワークショップ」を運営している。アニマルセラピー、音楽療法の他に昨年5月からは、月1回のペースでサッカー教室をスタートした。今回は、サッカー教室の講師で元プロサッカー選手の満山浩之さんに話を聞いた。
満山さんは大学を卒業してから単身ブラジルへ渡りプロ契約。その頃、熱心なクリスチャンだったホストファミリーから教会へ誘われ、教会に行き始めた。その後、エストニアでプレイ。日本に帰国後、クリスチャンになった。「ブラジルで植えられた信仰の種が日本で芽が出たのだと思います。ホストファミリーが本当の家族のように寛大に優しく接してくれたのが、すごく嬉しかったんです。そこでクリスチャンの優しさに触れて、自分自身の中身も大きく変わっていきました」と自身の信仰を振り返る。
現在は介護士として働く傍ら、サッカー教室で指導に当たっている。自分でプレイすることはもちろん楽しいが、サッカーの楽しさを伝えたいと満山さん。「ボールを蹴って体を動かすこと。ボール1つあれば手軽にみんなでできますし、一緒に汗をかいて健康にもいい!」と醍醐味を語る。
この日のサッカー教室の参加者は約30人。人によって抱えている障がいはさまざまだが、天気にも恵まれ、はつらつとボールを蹴る。「難しいことは何も必要ないんです。ボールを蹴って、ゴールにたくさん入れたほうが勝ち、くらいの認識で楽しめばいいんです」と言う。午前中は大人の部、午後は子どもたちとのボールを交えた交流の時間となった。
このサッカー教室が始まった当初、ボールに触ること自体が初めてという人も多かったと、施設長の澤田友孝さんは言う。「経験のないことで少し不安に思っていた子もいたが、やってるうちに段々楽しんでくれるようになりました」と、手応えを実感していると話す。参加者の一人も「僕にもできる」と元気に語ってくれた。「今年中にはみんなで試合しような!」と満山さんもエールを送る。
指導法については、「最初はただ楽しんで自由にボールを蹴ることをアドバイスしました。制限してもあまり良い結果にはつながりません」と言い、技術やルールではなく純粋に体を動かす楽しさを説く。
「他のスポーツは道具が必要なことが多い。でも、南米やアフリカのような靴や道具を買えない子どもたちがたくさんいる国でもできる。ボールがなくても新聞紙や空き缶でもいい。そのシンプルさが世界中で愛される理由の一つだと思います」とサッカーの魅力を語る。
「ルールはあとでもいいんです。本当に好きで、その競技をやる人が覚えてればよいこと。まず一番の基礎は楽しむことで、一番重要なことだと考えてます」と語ってくれた。
■ のぞみ牧場学園
■ のぞみワークショップ