情報化社会といわれて久しい現代。日常の至るところにまで「情報化」は浸透している。学校では、氾濫する情報を適切に扱うための授業もあるほどだ。この情報化社会にあって、教会は情報をどのように発信し、活用すべきか? 5年前に教会向けのホームページ制作事業「ブレッドフィッシュ(BREADFISH)」を立ち上げた丸山泰地さんは、これまで100社近くの企業ウェブサイトを手掛けてきたこの道のエキスパート。教会のホームページを制作するだけではなく、どのように活用するかまで提案している。
プログラマーとしてキャリアをスタートした丸山さんは、「現代の教会は、情報発信に課題を抱えているところが多い。そういう教会のサポートをしたい」と、事業を立ち上げた理由を語る。クリスチャンになったのは12年前。三浦綾子の伝記小説『夕あり朝あり』との出会いがきっかけだった。この小説の主人公、日本初のドライクリーニング会社「白洋舎」の創業者である五十嵐健治氏の生き方に感銘を受け、信仰を持つことを決めたという。そして、「自分に与えられた賜物を使って教会の役に立ちたい」と祈り、2010年にブレッドフィッシュを創業した。
最初は、起業することの経済的不安と、教会のサポートをうたいながら制作費をもらうことへの抵抗を感じ、葛藤があったという。しかし、この働きを「慈善活動ではなく“ビジネス”としてやっていこう」と決断した理由について、「タダでやってしまったら『無料だから仕方ない』と、(自身・クライアント共に)必ず甘えが出てきてしまうと思うのです。ホームページ制作は時間も労力も使うものですし、見てもらえなければ意味がない。見てもらうためには、相手のニーズに適っていることとクオリティーの高さは重要。それらを提供しようとしたら報酬は必要」と話す。
しかし、目的は事業の拡大ではなく、あくまでも教会のサポート。ひな型を利用して価格を抑えて制作する「シンプルプラン」は、小規模な教会でも手の届く価格で、制作スピードも速く、最低限のお金と時間でホームページを立ち上げられる。一方、教会のオリジナリティーを出し、細部にまでこだわりたい教会には、完全オーダーメイドの「クオリティープラン」を用意している。
デザインなどの分野では、未信者のクリエイターを起用していることも特徴の一つだという。「信仰に対する知識と理解、それと未信者の方々の視点の両方を持ち合わせないと、教会が伝えたいことを本当に伝えることは難しい」と丸山さん。また、「未信者の方に(仕事を)お願いすることによって、一つの伝道のきっかけになれば」と話す。
現在、教会も資金が潤沢なところばかりではない。ブレッドフィッシュでは、一般企業の案件もこなしつつ、月約3件のペースで教会からの依頼を受けている。
「情報発信の重要性は企業も教会も同じ。ですから、教会に対しては営業というよりは、必要性を広める啓蒙活動のような側面もあります」と丸山さんは話す。基本的な考え方は「見る人の立場に立って伝える」ことだと言う。
「私たちが伝えるべき相手は、イエス・キリストのことを知らない多くの人たち。その人たちの立場や気持ちを考えることなく、自分たちの言いたいことだけを伝えてしまいがち。だから、単にウェブサイトを制作するというよりは、『情報コンサルタント』のように、どうすれば良いかをプロとして提案し、自分のできることをして、共に教会を築いていくような活動をしていきたい」とビジョンを明かしてくれた。
現在、丸山さんは、キリスト新聞のコーナー「スキルアップ講座 教会の情報発信術」で、教会に役立つIT情報を分かりやすく伝える活動もしている。教会が福音を「伝える」お手伝いをする丸山さんにとって、プロとしての知識を生かし、教会に必要な情報を自ら「伝える」こともまた丸山さんの大切な働きだ。