【CJC=東京】社会に出た人が、「召命」を受けて神学校に学び、「第二の人生」を聖職者として過ごすケースは稀ではない。しかしそれだけで良いのか。特に聖職者不足に悩まされている教会では、その「有効活用」も課題のはず。聖職者になると、本来の仕事に付随するものがたくさんあり、それに忙殺され、疲れてしまう例も見受けられる。教会堂一つを取ってみても、建設計画から始まって、完成後も修理・改修などが必要となる度に、時間を取られてしまう。
米国の専門通信CWNによると、ニューヨーク・ミッドタウン地区の聖家族カトリック教会のジラルド・E・マレイ神父は、信徒320人に奉仕している。「時間の4分の1は、管理に割かれている。専門の教会マネージャーがいれば、もっと説教準備や研究に時間が取れるのだが」という。
そこで発想を転換しよう、と米カトリック教会ニューヨーク大司教区が、「教会経営」に関しては、ビジネスマン信徒の希望者を訓練して委ねる計画を打ち出した。信徒としても、第二の人生を自己の専門を生かしつつ、教会に仕えることが可能なら、その道を選ぶ人も出てきそうだ。
問題は「専門」の前に、社会と教会の違いを「専門家」に教えるとなると、教える方も「専門家」である必要があること。
ニューヨーク大司教区は、ペンシルベニア州フィラデルフィア近郊にあるカトリック系ビラノバ大学「教会経営とビジネス倫理センター」と提携して、2年間の電子教育を行い、試験に合格した場合、「教会経営修士」号を授与することにした。同大は2008年に教会経営で修士号を得られる課程を開設したが、これまでのところ年間修了者は20人以下にとどまっている。
今回大司教区が立てた構想では、「教会経営修士」課程のカリキュラムを財務報告、ファンドレイジング(募金管理)、人材管理、民法・教会法、戦略策定などで構成する。会計実務などの実習科目はニューヨーク大司教区の要請に応じた内容になっている。
大司教区としては50人を受講させ、授業料は大司教区と、受講生が合格したら採用する予定の小教区(教会)が負担するという。