昨年4月から聖学院大学(埼玉県上尾市)の学長を務めていた姜尚中(カン・サンジュン)氏(64)が20日、5年の任期途中で辞任することを明らかにした。同大の公式サイトで発表した。
「皆さんへ」と題したメッセージで姜氏は、「洗礼を受け、家族生活が始まった上尾の地に深い思いを抱き、この地にある聖学院大学で、若い学生諸君と、共に語り合い、知ることの喜びや、生きることの悲しみ、そして希望を分かち合いたいと切望していただけに、残念です」などとコメントした。
姜氏は、辞任の理由を「諸般の事情」としており具体的には言及していない。一方、朝日新聞や毎日新聞が同大関係者の話として伝えたところによると、前学長で同学院理事長である阿久戸光晴氏ら経営陣と、大学運営をめぐって意見の相違があったという。
姜氏は、学長就任以来「地域のための、地域による、地域の大学を合い言葉に『神を仰ぎ、人に仕える』若き学徒を輩出することを目指してきました」とし、「士気の高い有能な教職員にも恵まれ、短い期間とはいえ、一定の成果を上げることができたと自負しています」と述べている。今後は、大学外から大学に貢献するとし、執筆・言論活動に専念するという。
地元の埼玉新聞は、「姜さんからは大学を変えようという熱意が感じられた。もう少しいてほしかった」「大学のシンボルだったのに」「とてもショック」など、姜氏の突然の辞任を知った学生たちの反応を伝えた。
東京大学名誉教授でもある姜氏は、著書『悩む力』などのベストセラーやテレビ出演などで広く知られる政治学者。昨年4月に聖学院大全学教授から、同大の第6代学長に就任していた。
同大はこれまでのところ、後任の学長については発表していない。