賛美。それは神を褒めたたえること。旧約聖書の詩編に収められた多くの詩の作者とされるダビデ王も、現代でいう「Rhyme(韻を踏む)」を多用し、演奏、踊り、歌など、さまざまなスタイルを使い賛美したといわれている。そして、表現は常に技術と共に進化し、言語は時代と共に変化し続けている。
今回話を伺ったのは、現代賛美の歌詞の翻訳を行っている堀井ローレンさん。彼女は英語と日本語を話せるバイリンガル。生まれも育ちも日本で、父は宣教師のアーサー・ホーランドだ。
彼女が翻訳を始めたのは6~7年前。通っている教会が日英のバイリンガルで礼拝を行っているため、「自分の知ってるお気に入りの賛美を歌いたかった」と翻訳を始めたきっかけを話す。
翻訳は、文化の違う人々に対してその言葉を伝えるため、さまざまなチャレンジがある。それぞれの言語によって、前提となる文化なり、独特の言い回しがある。そのため、対応する単語に置き換えるだけではうまく伝わらないばかりか、意味が通じないこともある。さらに歌詞の翻訳となると、対応する単語の中で、メロディに合わせられるものを選ぶ必要も出てくる。
ローレンさんは、「ただ歌詞を翻訳するんじゃなくて、その歌が持っている雰囲気だったり、空気感だったり、そういうものを日本語で伝えたいのです。そのためには、言葉だけ直訳してもその歌の良さは伝わらないし、ちゃんと訳せていても単語の使い方次第で聞いている人の心に届かない。両方の文化を知らなくてはできないことだから難しい面もある」と、歌詞翻訳の難しさを語る。
「英語には敬語がないので、神様と人との親密さを表現するのが得意。神様がすぐそばにいて語り掛けてくれるような歌い方が英語の持つ持ち味」と言う。一方、日本語は神への敬意を表すのが得意だという。「日本語に翻訳する上で、その原語(英語)の持ち味の親密さを伝えるような雰囲気を伝えたいし、それが課題」と言う。
そんな彼女は、普段から仕事としても楽曲制作や歌手活動をしているプロの作詞作曲家。普段はジャズやR&Bなどを聴くという。一方、「ワーシップソングに関しては、どうしてもカジュアルに聞こうという感じではなく、感情移入して根を詰め過ぎてしまうところがあるんです」と笑いながら語る。
「私は元々けっこう完璧主義なところがありました。だから、信仰によって一歩踏み出すということが、自分のテーマでした。でも自分が納得いかなくても、実際にアクションを起こしたら、他の人の祝福になれているということを経験できました」
現在、教会では、「エンカウンター」という賛美集会を主催している。自身の賜物については、「最初は私と神様との個人的な関係の中で用いるものだったけど、賛美集会の様子を見て、自分の賛美が他の人の祝福になることに気づきました。人前で歌うことは目立つことなので、それまで自分から積極的に賜物を使うなんて、『おこがましい』と思ってリミットをかけてしまいがちだったけど、神様って人の想像をはるかに超えて働く方」と話す。賛美を通して、「どうしたらもっとこのメッセージを受け取ってもらえるか、今どんな言葉を発するべきか」を追求していくようになったと明かす。現在では、「自分のギフト(賜物)を使うことを恐れず、イエス様の言うことに、“Yes”と答えて使っていこうと思います」と思いも積極的だ。
彼女が今までに翻訳した曲は、ジャンルを問わず50曲以上。その曲の一部は、ユーチューブやホームページで公開されている。