本紙の1月13日付記事「西欧でキリスト者減少、各地で教会閉鎖相次ぐ」で、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事「Europe’s Empty Churches Go on Sale(欧州の空になった教会が売りに出される)」が紹介された。
これとの関連で一つ重要な本がある。それは、米国の歴史・宗教学者であるペンシルバニア州立大学のフィリップ・ジェンキンズ教授が、2002年に初版を著した『The Next Christendom: The Coming of Global Christianity』(オックスフォード大学出版会)という英語の本である。なお、著者自身は、同書で用いている“Christiendom”の意味について、クリスチャンが国家よりもまず教会に忠誠心を置くものであるとしている。
この本は最新刊ではなく、しばらく前に出た本だが、それでも2002年に第1版、2007年に第2版、そして2011年に第3版と版が重ねられてきている。日本語には訳されていないが、国際的には近年においてよく知られている本のようである。
「地球規模のキリスト教の到来(The Coming of Global Christianity)」という副題が付いたこの本におけるジェンキンズ教授の基本的な主張は、キリスト教は欧米から世界の南(the global South)側、特にアフリカ、アジア、中南米へと移り拡大しつつあり、これからもその傾向は続くだろうというものである。
ジェンキンズ教授によれば、キリスト教が欧米中心の宗教であるという時代はごく最近になって終わり、全く地球規模なものとなっているという。先に述べた西欧の教会に関する記事は、これを例証しているように見える。そして、ジェンキンズ教授はさらに、その世界的な潮流の未来を予測し、アフリカのキリスト教人口が30年後に倍増するだろうとしている。
ただし、著者は昨年11月4日に米クリスチャニティ・トゥデイ誌(電子版)で、「Is This the End for Mideast Christianity? - For Mideast Christians, 2014 has been a year of bloody disaster. Are these churches on the edge of extinction?(中東のキリスト教はこれで終わりなのか?―中東のキリスト教徒たちにとって、2014年は流血の災いの年であった。これらの教会は絶滅寸前なのか?)」という記事を書いている。
著者はこうした主張を支える詳細な論拠を展開した上で、「歴史を振り返るか、その前を見るかにかかわらず、私たちは再度、キリスト教が弱さを強さに変えるための息を飲むような能力を示すことが分かるのである」と結んでいる。
それでは、欧米でも世界の南側でもない日本のキリスト教は、この潮流のどこに位置するのか?
この本で著者は、日本を「キリスト教やイスラム教のどちらも支配的でない」国の一つとして挙げている(207ページ)。その一方で、「キリスト教の将来はアフリカかまたは南米、中国かまたは日本にあるかもしれない」と述べている(238ページ)が、その根拠は明確に述べていない。
著者のいうこうした世界的な潮流は、日本のキリスト教にとって何を意味するのか?また、日本の教会はそれをどのように認識しているのか?そして、私たちはその潮流の中でどのように生きるのか?この本は、読者にさまざまな点で考えさせ、示唆に富む本ではある。