暴力団に対する排除運動の高まりや強制捜査などを受けて、組織から抜ける組員が増えていると、朝日新聞などが報じている。
「暴力団」とは、警察やマスコミが戦後に命名したものだが、そのルーツは室町時代にさかのぼるという。寺社の祭礼の周辺で商業活動を営む者を「的屋(てきや)」または「香具師(やし)」、丁半などの博打を生業とする者を「博徒(ばくと)」と呼び、これらの者は一般社会からアウトローとされていた。
その後、日本が太平洋戦争で敗北したことで物資が不足し、闇市が栄えていくことになるが、この時、特に露店を本職としている的屋系団体などのアウトローが勢力を増す。また、敗戦による社会の荒廃により、戦後の日本の治安は極めて悪く、その中で戦後の混乱の中で形成された「愚連隊(ぐれんたい)」などの不良集団などから暴力団が誕生、勢力を伸ばしていった。そして組織を形成し、暴力などによる犯罪活動を職業的に行い、闇市から発展した繁華街に根を下ろした。時が経つにつれ、“任侠”“極道”とも呼ばれ、一部で美化されるようになっていった。
そんな状況を鑑み、1992年に暴力団対策法が施行。その後の暴力団に対する排除運動の高まりや強制捜査などを受けて、組織から抜ける組員が増えているという。
同紙は、特定危険指定暴力団の工藤会(本部:北九州市)の下部組織を数年前に離脱した男性(40代)のインタビューを掲載。「組員だったころは心休まる場所がなかった。今では社会で堂々と生きるありがたみをかみしめている」という声を伝えている。地元警察も、離脱者の就労を支援して組織に戻さないための態勢作りに着手、福岡刑務所では服役中の組員への離脱指導に取り組んでいるという。
また産経新聞は8日、工藤会の構成員・準構成員が昨年12月末時点で、前年より80人減少し870人となったと報道。福岡県警は昨年のトップ摘発など「壊滅作戦」が奏功したとみており、今後もさらに減少すると見込んでいると伝えた。
クリスチャンの中にも、元暴力団や服役経験者への伝道を行う働きがある。進藤龍也牧師(「罪人の友」主イエス・キリスト教会)の刑務所伝道ミニストリーもその一つだ。
元暴力団幹部だった進藤牧師。3度目の服役中に差し入れられた聖書を読み、更正を決意。牧師となった現在、更正を誓った人たちの手助けをしている。
現在、服役囚の約半数が一生刑務所と“娑婆(しゃば)”を行き来するといわれているという。更正しようと決意しても、服役経験者に対する世間の風当たりは強く、仕事も生活もままならない。出所してもそれまで関係していた悪い友人と付き合うようになり、再び罪を犯してしまうことが非常に多いという。
進藤牧師は、「彼ら(ヤクザ)と私たちの取り合いです。多くの人は『やめられるならヤクザをやめたい』、あるいは『こんなはずではなかった』と思っても、学歴や資格などもなく、仕方なく(ヤクザを)続けています」と現状を語り、こうした人々が立ち直るための道を共に歩みたいと、本紙の取材に答えている。
政府は現在、暴力団やマフィアなどによる組織犯罪、世界で相次ぐテロ行為の未然防止を目的とした「共謀罪」創設を検討している。26日召集予定の通常国会への提出は見送るが、今秋に予定されている臨時国会には提出する方針を示している。