パキスタンのキリスト教徒たちは、自分たちが今日まで経験してきた迫害は「単なる氷山の一角」に過ぎないかもしれないと心配している。
パキスタン北西部に位置する、パキスタン聖公会ペシャワール教区が出す最新のニュースレターの中で、2013年以降の同国のキリスト教徒に対する22件の暴力事件のリストには、パキスタンの「ダイシュ」(ISIS)と呼ばれる過激派集団の存在の可能性のために、「事態はより悪くなりそうだ」という警告が伴っていた。
119人が殺害され、さらに多くの負傷者を出した、2013年にペシャワールの諸聖徒教会で起きた2つの自爆テロと共に、ニュースレターの執筆者は、米国際宗教自由委員会(USCIRF)によって提供された情報から、パキスタン国内におけるキリスト教徒に対する他の攻撃についてまとめている。
このリストには、同国北東部ラホールのキリスト教徒の弁護士に対する暗殺未遂や、イスラム教を冒涜(ぼうとく)したとして殺された58歳の男性、首都イスラマバードでキリスト教徒が所有する店が焼き払われたり、キリスト教に改宗したことで数人が殺されたり、キリスト教徒の少女が強姦(ごうかん)されたり、イスラム教へ強制的に改宗させられたりといった事例が含まれていた。
最も最近の事件は、キリスト教徒の夫婦であるシャハザド・ビビさんとシャマ・ビビさんが、冒涜の容疑をでっちあげられた後に、レンガの窯で焼かれたことである。
「フロンティア・ニュース」という名のこのニュースレターの11月特別号には、「当教区は糾弾する!」という見出し付きで、同月のより早い時期に同教区が指導した抗議の行進についての報告が含まれている。行進は聖ヨハネ大聖堂で始まり、ペシャワール記者クラブで終わり、そこで教会指導者たちが記者会見を開いて夫婦の殺人を非難した。
ニュースレターの執筆者はこう記している。「情報筋によると、シャハザドさんと彼の妻であるシャマ・ビビさんは、暮らしのために Chak-59 という村にやって来た。窯の所有者であるヨウサフ・グジャール氏は、前金の不払いをめぐる争いで、部屋に鍵を掛けてその夫婦を閉じ込め、村人たちに助けを求めた。彼はこの夫婦をイスラム教への冒涜を理由に非難した。この夫婦をひどく殴った後、激怒した暴徒はこの夫婦をれんがの窯の中へ投げ込み、彼らに火を付けたのである」
「またしても、貧しいキリスト教徒たちに対する個人的な報復が、パキスタンの冒涜法の容疑へと変えられている。この法律のこの条項は、パキスタンのキリスト教徒に対する迫害や超法規的殺人のために、彼らに対していつも使われているどころか、誤用されているのだ」
記者会見で語ったペシャワール教区名誉主教のムナワール・ルマルシャー主教は、この事件は「国辱」であるとして、殺人犯たちを警察の記録に載せるよう政府に求めた。
主教はさらにこう付け加えた。「パキスタンのキリスト教徒たちは法を順守する市民であり、他の人たちの信仰を尊重している。キリスト教徒たちは異なる諸宗教の平和的共存を信じており、この地域における諸宗教の調和のために率先した積極的な役割を担っている」
そして、ニュースレターはこう結んでいる。「今日では、冒涜法に反対して語ることはいかなる形であってもそれ自体が冒涜行為となってしまった。これは単なる氷山の一角であり、『ダイシュ』(ISIS)と呼ばれる過激派集団がいるという噂もあって、事態はさらに悪くなる可能性がある」