「え、ここは日本?」と一瞬思うほどの日本人の数。しかし、そこはれっきとした米国ミシガン州。しかも教会の中だ。80人程の若い日本人カップルと家族が、秋が深まる11月の土曜日、同州ファーミントンヒルズにあるフェイス・カバナント教会に集まった。ミシガン州の日本人コミュニティーに一体何が起こっているのだろうか。
北米邦人宣教会(North American Japanese Outreach=NAJO)の宣教師で、同州を拠点として北米の日本人伝道に精力的に取り組んでいる宮本俊一宣教師・正子夫人に話をうかがった。
11月は米国では感謝祭があるお祝いの月。英国から米国大陸に渡った移民が、最初の収穫を神に感謝をもってささげて祝った日とされ、一般的には家族や親戚、友人たちが集まり、七面鳥などを共に食べ祝う祝日だ。
米国では11月の第4木曜日が感謝祭だが、それよりも少し早めのこの日、フェイス・カバナント教会では、多くの米国人スタッフの協力を得て、宮本夫妻による「家族で楽しむ感謝祭」が行なわれた。前半、夫婦は感謝祭クッキングに参加。その間、子どもたちは教会の体育館でサッカーを楽しむ。後半は、米国人も日本人も、大人と子どもが皆一緒になって食事を楽しんだ。家族みんなが楽しめ、食事ができることを感謝する、このような時間を望まない人はいないのではないだろうか。
五大湖に面し、「自動車の都」と呼ばれるデトロイト周辺は、日産、トヨタ、ホンダなど、日系の自動車関連会社や技術系の会社が多く、そこに派遣される日本人エンジニアの駐在員を含めた在ミシガン日本人数は約1万2千人に上るといわれている。若く高等教育を受けた真面目な人たちが多いのが特徴、と宮本氏は言う。このような駐在員家族が、デトロイト空港に着いてまず送られる場所が教会のESLクラスだそうだ。そこで、慣れない土地で生活するために必要な英会話や生活のノウハウを学び、さまざまな支援を受ける。
宮本夫妻のミニストリーには、毎週月曜日のESLクラスと木曜日のカルチャー教室がある。ESLクラスでは、米国人教会員たちがボランティアで英語を教え、約30人から40人の日本人婦人たちが学んでいる。午前のクラスを終えると宮本家に移動。昼はそのまま正子夫人手作りの昼食会になる。
カルチャー教室では、クリスチャン講師によるズンバダンスなどのフィットネスや料理教室などがある。どのクラスでも、聖書のみことばを黙想し祈るディボーションの時間があり、そこでスタッフの救いの証やみことばに触れることができる。「クラスに参加する95%の人が聖書を開いたり、学んだこともなかったという方なのに、皆さん一生懸命に真剣に学んでいる」と宮本氏は言う。
また若い参加者にとって、彼らの親の世代に当たる米国人のボランティアスタッフの存在が、この慣れない外国の地で過ごすのに、かけがえのない存在になっていくそうだ。日本では親しみの少ない文化であるハグ(抱擁)を受けたり、ありのままで愛されていることを体験することで、心がどんどん開かれていく。教会は生活の一部となり、楽しいところ、安心できる場所として、3、4年の駐在生活で信仰をすんなりと受け入れる人が多くいるという。
日本国内では、毎年7千人程が洗礼を受けるといわれる中で、海外で信仰を受け入れる人が5〜6千人いるという数字は、いかに海外で救われる人が多いかを示す。
「日本の教会は、このような海外で信仰を持った帰国組日本人たちを受け入れる備えをしてほしい」と正子夫人は語る。「聖書と礼拝だけではなく、子育てクラスや料理教室など、未信者でも教会に行きやすい雰囲気を作り出す工夫が必要です。日本人伝道は難しい、日本人は救われにくいとは考えずに、海外で起こるなら日本でも起こるはずだ、と考えを変えることが大切です」と言う。
宮本夫妻のミニストリーの今後の課題は、米国で信仰を持ったクリスチャンたちが帰国後、日本の教会に根付くように導き励ますことだという。それには、スカイプを使ったバイブルスタディーなど、テクノロジーを利用してつながり続けることや、日本の教会との連携も重要になってくる。
海外で信仰を持った日本の若い世代と、新渡戸稲造や新島襄などの明治期の信仰の開拓者たちとが重なって、新しい風が日本に吹いているように興奮を覚えるのは筆者だけであろうか。
宮本俊一宣教師夫妻のミニストリーへの問い合わせは、北米邦人宣教会(電話:+1−248-757-2572、メール:[email protected]、[email protected])まで。