聖公会と東方諸教会は、キリストの受肉論(神が肉体を得てこの世に生まれたこと)について共同声明を発表し、和解へ向けて大きく前進した。
今回の合意に加わった東方諸教会には、アレキサンドリア・コプト正教会、アルメニア使徒教会、マランカラ・シリア正教会などが含まれた。これらの教会は、西暦451年のカルケドン公会議以来、キリストの受肉表現の相違で、正教会とローマ・カトリック教会、またプロテスタントの伝統からも分裂していた。
キリストが人間であると同時に神であるという信条を、神学上いかに正確に表現するかが問題となっていた。
しかし今回、聖公会のジェフリー・ローウェル主教と、アレキサンドリア・コプト正教会のディムヤート府主教ビショー座下が共同議長を務めた聖公会・東方諸教会国際委員会は、「キリスト論についての同意書」を発表した。これは、双方が歩み寄り、互いの教義上の正当性を認めたことを意味する。
キリストの2つの性質は「解釈が違うだけで」、性質自体は「分裂、変化、混乱せずに存在し続ける」と声明は強調する。
しかしながら、声明は「われわれがキリストの2つのご性質を語るときも、それは正当化されている。なぜなら、分けることのできないキリストの性質自体を否定してはいないからだ」とも述べる。また「言葉の限界」をも認め、「われわれは、御言葉が人となって完全にわれわれに身をささげるために来てくださった神のミステリーを、枠にとらわれて表現することはできない。それは、言葉で表現することのできない、不思議な神と人間の結合であり、だからこそわれわれは崇め礼拝しているのだ」と述べている。
正教会の中心信条では、キリストの神性と人間性において以下のように認めている。「絶対的な結合を理解するに従って、われわれは聖母マリアをテオトコス(神の母)と告白する。なぜなら言葉である神が、受肉され人となり、まさしくその受胎のときから罪なき完璧な人間性を彼女から得たからである」
これは、16世紀の聖公会神学者リチャード・フッカー氏からの引用で、彼の『教会政治論』でも2つの性質を持つキリストの同一性を記述している。
今回の声明は、東方諸教会はキリストの神性だけを信じる「単性論者」であるとの非難を断固として否定し、「東方諸教会の教理は、神の一つの性質だけではなく、御言葉の神と人の性質を結合させ、一人の人間として生まれたことを告白するもの」としている。