カトリック甲府教会(山梨県甲府市)は、8月31日(日)午後1時から同教会の講堂で、1955年ベルリン国際映画祭で長編映画賞を受賞した映画『ひろしま』の上映会を開催する。
この映画は、自らも広島で被爆した教育学者・長田新(おさだ・あらた)が編纂した文集『原爆の子〜広島の少年少女のうったえ』(岩波書店、1951年)を映画化し、1953年に公開したもので、監督は関川秀雄、出演者は岡田英次、月岡夢路(広島市出身)、加藤嘉ほか。映画化にあたっては、広島県教職員組合と広島市民が全面的に協力し、多数の広島市の中学・高校と父母、教職員、一般市民8万8500人が手弁当のエキストラとして参加した。
長田新はその原作『原爆の子』の「序」で聖書の言葉をいくつか引用しつつ、「私は今ここに、当時広島に住んでいて、原爆の悲劇を身をもって体験し、あるいは父や母を失い、あるいは兄弟に死なれ、あるいは大切な先生や親しかった友達をなくした広島の少年少女たちが、当時どのような酸苦を嘗(な)めたのか、また現在どのような感想を懐(いだ)いているかを綴(つづ)った手記を諸君の前に示そうと思う」と記している。
長田はまた、その編纂の動機について、「私は一人の教育学者として、このあまりにも悲劇的な体験を持っている少年少女たち、まだ特定のイデオロギーや宗教的世界観や政治思想などによって染められていない、無垢な少年・少女たちの手記を集めて、今日世界の教育にとって最も重要な課題の一つである『平和のための教育』研究の資料として、これを整理し、かつ人類文化史上における不朽の記念碑(ドキュメント)として、これを永久に残したいと思い立った」と述べている。
その上で長田は、「記録に目を通してみた私は、このあまりにも貴重な資料を自分一個の研究資料として私するには忍びなくなった。そして少なくもその一部を、できることなら一日も早く、世の教育者はもちろんのこと、いやしくも良心のあるあらゆる階層の日本の人々、否(い)な、世界の人々の前に『生(なま)のままの材料』として提供すべきではないかと考えた」と記している。
この映画のフィルムの修復活動をし、またその広報を日本カトリック正義と平和協議会に依頼した、東京都在住の小林一平さんは7日、本紙による電話取材に応じ、「長田新さんが常におっしゃっていた言葉が、『幼き神の子の声を聴け』。大変意味の深い言葉だろうと思います」と語った。
子ども向けのイベントも行っているという小林さんは、「(長田新さんが)信者かどうかはっきりわかりませんけど、そういう意味で非常に深い神の(子の)声という意味合いを使っている。それはもう大変純粋な心っていう意味なんだろうと思います」と付け加えた。
「結局、『神の(子の)声』というのは、気障に聞こえるかもしれませんけど、『神は愛なり』という言葉と同じで、やっぱり愛情なんだろうと。愛情というものを持つことが、平和だとか人類愛だとか、ありとあらゆることに通じる。そういう意味で、この映画『ひろしま』というのはその原点を描いているんです」と、小林さんは話した。
この映画に関するメールやチラシの中で、カトリック甲府教会は映画『ひろしま』の上映拡大を支援し、「この映画の配給元『奇跡への情熱(核廃絶)プロ ジェクト』は、60年を経過し画質劣化の激しいオリジナ ルフィルムをデジタル化により修復し、また各国語による字幕版も制作することで世界中での上映を目指していま す。私たちは、核兵器廃絶に向けこの活動を強く支援し、フィルム修復資金確保のため多くの上映会が開催されること を願っています」と述べている。
カトリック教会の関係者がこういう活動を「大変よく理解してくれている」と語る小林さんは、カトリック教会は核兵器廃絶を訴えているということが「明確に出ているのがうれしい」という。そういう意味でも、この映画を「たくさんの人に見てもらいたい」と話している。
上映時間は104分。12時から先着100人に軽食(おにぎり)が配られるという。チケットは1枚1000円で、中学生以下は無料。会場への交通は、JR甲府駅から徒歩約15分、タクシーで約5分、または石和温泉駅方面行きバスかあるいは中央高速バス新宿~甲府線で、「中央3丁目バス停」で下車、徒歩5分。
詳しくは、映画のチラシを参照。