1966年に静岡県で住居侵入・強盗殺人・放火の容疑で逮捕され、死刑判決が確定しながらも、これまで48年間獄中で無実を訴えてきた、カトリック信徒の袴田巖さん(78)について、静岡地方裁判所は27日午前10時、袴田さんを犯人とする証拠に捏(ねつ)造の疑いがあるとして、再審開始と死刑及び拘置の執行停止を決定した。袴田さんは同日夕方に東京拘置所から釈放された。
「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」編の『主よ、いつまでですか~無実の死刑囚・袴田巖獄中書簡』(新教出版社、1992年)に綴られた、真実・正義と再審を求める袴田さんとその支援者たちの祈りや想いは、今やっと叶えられ始めた。
1980年に発足した同会の副代表を務める門間幸枝さん(カトリック清瀬教会オルガニスト)は、本紙とのインタビューに答え、再審開始の決定について、「本当に遅い。日本は人権後進国」と語った。
27日の午前10時、静岡地裁前にオーストラリアやフランスを含む国内外の報道陣が多く詰めかける中、「再審開始」の垂れ幕を掲げて弁護団が静岡地裁から姿を現すと、大勢の支援者たちからわっと歓声が沸いた。袴田巌さんの姉秀子さん(81)は、支援者や記者団に対し、「支援者のみなさんのおかげです。ありがとうございました」と語った。
その後、支援団体は、静岡地方検察庁に対し、即時抗告を行わないよう要請した。
同日午前11時30分から静岡産業経済会館で行われた弁護団の記者会見で記者団に配布された静岡地裁の決定骨子には、「決定骨子 有罪の言渡を受けた者 袴田巖」「主文 本件について再審を開始する。有罪の言渡を受けた者に対する死刑及び拘置の執行を停止する」と記されていた。
この決定文を同地裁で受け取った秀子さんは、この記者会見で記者団に対し、「ただうれしいのみでございます。(巖さんに)再審開始になったよって伝えたいと思います」と語った。また、西嶋勝彦弁護団長は「ただちに身柄を釈放するようにと地検に強く申し入れをしたい」と述べた。
西嶋弁護団長はまた、静岡地裁の判断について、「弁護側が提出した新証拠も丁寧に評価してくれたし、従前の証拠と併せて再審の王道というか、新規明白な証拠をいかに判断するかという精神を受け継いで、再審にも刑事裁判の鉄則である疑わしきは罰せずという原理原則を忠実に生かした決定だと思う。そういう意味で裁判官3人の努力を高く評価したい」と述べた。(続く:「(2)支援団体副代表『人権後進国・日本の夜明け』」へ)