[1]序
今回は、前回の7章前半に引き続き、後半を味わいます。初めに19節から22節、続いて23節以下を見て行きます。
[2]「その角は」(19~22節)
(1)19、20節
①ダニエルの意図
「それから私は、第四の獣について確かめたいと思った」(19節)。
②「第四の獣」の特徴
「突然、第四の獣が現れた。それは恐ろしく、ものすごく、非常に強くて、大きな鉄のきばを持っており、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは前に現れたすべての獣と異なり、十本の角を持っていた」(7節)
「それは、ほかのすべての獣と異なっていて、非常に恐ろしく、きばは鉄、爪は青銅であって、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた」(19節)
(2)「その角」(21、22節)
①「一本の角」の迫害のもとで、神の民の多くの者が苦悩する(21節)。
②神のさばきが行われ、聖徒たちが国を受け継ぐ(22節)。神のさばき、この一事をダニエル7章では、10節「さばく方が席に着き」、26節「しかし、さばきが行われ、彼の主権は奪われて、彼は永久に絶やされ、滅ぼされる」においても強調している。
[3]解き明かしの内容(23~27節)
(1)21節を詳しく説明している23節から25節の部分。第四の獣、十本の角、もう一本の角(もうひとりの王)について。
(2)22節を詳しく説明する26節と27節。神のさばきの事実。
[4]結び
ダニエルが、バビロンの王ペルシャツァルの支配の世に生きる者として、世界の歴史全体の流れを大きく見通す必要があったように、私たちも聖書の歴史の見方にしっかり立つ必要があります。
聖書の歴史の見方には、ダニエルの場合のように、少なくとも三つの点を含みます。
(1)悪を軽んじない。その現実的力を無視しない。
(2)神の民が現実の歴史の歩みにおいて、Ⅰペテロ5章8節に見るように、苦しみを経験し苦悩に直面する事実を承知する。
「身を慎み、目をさましていなさい。あなたがたの敵である悪魔が、ほえたける獅子のように、食い尽くすべきものを捜し求めながら、歩き回っています」
世界の教会の現状に注意を払い続ける必要があります。
(3)神のさばき、神の勝利の確信。主日礼拝、そして私たちの日常生活における礼拝は、御座に坐するお方を賛美することにほかなりません。
「御座にすわる方と、小羊とに、賛美と誉れと栄光と力が永遠にあるように」(黙示録5章13節)。この礼拝に生かされる者として、日々確信をもって、「ですから、私の愛する兄弟たちよ。堅く立って、動かされることなく、いつも主のわざに励みなさい。あなたがたは自分たちの労苦が、主にあってむだでないことを知っているのですから」(Ⅰコリント15章58節)と、励ましを受けつつ礼拝の生活を積み重ね、礼拝の生涯を歩むのです。
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宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。