米南部福音主義神学校(SES=Southern Evangelical Seminary)が14日、新しい人型ロボットを導入した。米国の福音派神学校が、人工知能という新しいテクノロジーに関する倫理研究のためロボットを使用するのは初めてのことだ。
このロボット、NAO(「ナウ」)は23インチのプログラミング用ロボットで、学生・教授陣共にこれを使って、生体工学、人間強化、トランスヒューマニズム、ナノテクノロジーに関連する研究を行うことができる。
「我々の文化が関わる全ての分野において、我々は最先端でありたいと思います」とSESのリチャード・ランド学長は発表した。「このようにして、我々は教会の指導者達を動かし、話されるメッセージに影響を与えて、クリスチャン達が何としてでもその信仰を守れるようにするのです」
このロボットは声と顔の認識ができる他、完全な移動性を持ち、7カ国語でテキストから音声への変換が可能だ。このロボットの使用は、アメリカの神学校としてはSESが最初だが、MITや東京大学、カーネギーメロン大学なども、ペットの餌やりや自閉症の子ども達のヘルプなどの個人的アシスタントとして、同類のNAOロボットを使用する実験を行っている。
ロボットを使用することで、SESの関係者は「ロボットに人間の仕事をやらせてよいか?」「病院や老人ホームなどで人のケアをさせてよいか?」「ロボットを使ったケアは人間との触れ合いをなくし、結局は人間としての倫理が破られるか?」などの倫理的問いに答えることを願っている。
SESでは、様々な年齢層と宗教的背景の個人からなるコントロールグループを集めて、ロボットに対する個人的な考えを調査し、実験と調査を行う予定だ。
調査では、いったんロボットに接した後、ロボットと交流してもらい、その後交流によってロボットに対して抵抗がなくなったかどうかを測る。
ランド学長によれば、ロボットを導入するという案は、SESで神学を教えるケヴィン・ステイリー助教授から出されたものだ。彼の博士論文は、人間と機械についての神学的考察だった。ステイリー助教授がロボット導入のための資金を得ようとしていたとき、何か「新しいオリジナルなこと」をするようにと、匿名の寄付者がSESに1万ドル(約100万円)を寄付してくれたのだとランド学長は説明した。
ステイリー助教授が徹底的な実験と調査を行う予定で、将来ロボットが人間の代わりになれるかどうか理解したいとしている。
ランド学長によれば、人間とロボットの交流は現在注目の話題であり、ロボットの導入は、SESにとって科学とテクノロジーの研究で先駆者となるための最初のステップである。
ランド学長が指摘したところでは、イギリスの研究者で『ロボットの愛とセックス:人間とロボットの関係の変遷』の著者、デイヴィッド・レヴィ氏は、2050年までにロボットと人間がアメリカで法律的に結婚できるようになるだろうと言っている。さらにレヴィ氏は、例えば、子どもに似せたロボットを作り、小児愛者が人間の代わりにそれらロボットを対象に性的いたずらをするようにすればよいとも提案している。
しかしランド学長は、この種の予言や提案は重大な結果を招くおそれがあると言う。
「人間があらゆる欲望を満たすため、分身として人型ロボットにあらゆるプログラミングをすることを考えてみてください。人間同士の関係を破壊し、社会からの孤立という結果に終わるでしょう」とランド学長は米クリスチャンポスト紙に語った。
「男性も女性も自分のパートナーにするロボットを創造できるとしたら、自分自身の似姿を作るでしょう。それは単なる自己愛に過ぎません」とランド学長。
またランド学長は、研究者、科学者が研究でロボットを使用することの結果を考慮していないことが多いと指摘した。
「新しいテクノロジーに接するとき、最初に問うのは『これは正しいか、間違っているか?』ではなく、『これは上手くいくか?』であることが多いです。変化と前進は同じだという致命的な思い込みをする傾向もあります。実際は違うことが多いのですが」
新しいNAOロボットは、SESの2014年度弁証論カンファレンスの特別ゲストになる予定だ。このロボットに名前をつけるため、SESではコンテストを開催するという。