震災から1年4カ月が経過した11日、淀橋教会(東京都新宿区)を会場に第16回東日本大震災復興支援3.11超教派一致祈祷会が開催され、ワールド・ビジョン・ジャパン理事長で東京シャロームチャペル牧師の榊原寛氏が特別メッセージを伝えた。また特別ピアノ演奏者として北本福音キリスト教会音楽主事の小西優子氏がピアノ賛美演奏を披露した。
榊原氏は第一テサロニケの手紙5章1節~11節を引用し、主の再臨が「盗人のようにやって来る」突然性と、妊婦が産みの苦しみの後に必ず出産に至るような確実性を伴ったものであることを伝えた。
榊原氏は「3.11から1年4カ月が経過するわけですが、現地に行って色々な事を経験されたりして、色々な事を思い巡らしていらっしゃることと思います。(被災地の)復興・復旧は、最終的には被災地の一人ひとりが自立していくことが出来るようになることだと思います」と述べた。
榊原氏は35年前に6歳の息子が大きなダンプカーに潰され即死するという惨事を経験し、「自分が生きていてはいけないのではないか」とさえ思ったことを証しした。1万9千人もの死者・行方不明者を出した東日本大震災について、「遺族の方々はどんなにお辛い気持ちだろうかと思います」と哀悼の意を表した。
被災地の人々の自立について榊原氏は、「5年、10年、20年経って振り返ってみたとき、あの亡くした辛い思い、悲しみがあったからこそ今の色々な人生の苦悩に立ち向かっていくことのできる勇気がある、と言えるような時を迎える事が出来た時に、初めて(被災地の)復興や復旧という言葉が見い出せるのではないかと思います」と述べた。
榊原氏は会場となった淀橋教会に集ったキリスト者らに対し、主の日の再臨に備えて待ち望む姿勢について、一テサロニケ4章11節を引用し、「いつ何時イエス様がおいでになってもお迎えが出来るためにも『落ち着いた生活をし、自分の仕事に励み、自分の手で働くよう努める』」べきであると説いた。
また信仰と愛の胸当て(Ⅰテサロニケ5・8)について「あなたの胸に愛と信仰の胸当てをつけろということは、あなたの存在そのものが信仰であり愛である。胸当ては相手に向かってつけられている。信仰と愛の胸当てはまず第一に神様に向かっていなければならない。私たちは神様をどれだけ信じて従っているだろうか。イエス様はからし種のような信仰でもよいと言っている。からし種のような信仰から豊かな実を結ぶことができる。私たちはそのような神様に向かう依存の姿勢をもって、はっきりと胸当てが神様に向いているだろうか」と問いかけ、再臨のキリストを迎える際、信仰と愛の胸当てを神の方向に向けていることが最も重要な姿勢であると説いた。
さらに「胸当ては人に対してという意味もある。(人と)信じ合う、愛し合う、信じてもらう、信頼されるというキャッチボールが必要。聖書の中では愛するという事は『互いに愛し合いなさい』と命令形で書かれている。愛することは独り芝居ではできない。愛する相手は配偶者であるかもしれないが、あなたの気に入らない敵であるかもしれない。自分と気持ちの合わない人であっても、相手に対して愛することができているだろうか」と問いかけた。
震災後「絆」という言葉が流行していることについて、同氏は「『愛する』ということと『信じる』ということがひとつにならないと『絆』という言葉は生まれてこない。震災後『寄り添う』という言葉が盛んに言われるようになった。相手を愛し、受け入れることで寄り添っていくことで、そこに初めて絆が生じる。その部分でしか、宣教は具体的にはならないのではないかと私は思っている。『無縁社会』と言われているような社会で孤立していく一方、仮設住宅の中でさえも、自殺者が増えていかないかとも懸念されている今日の状況の中で、私達クリスチャンがどれだけ自分という存在そのものが、『あなたを信じている、愛している、受け入れている、一緒に寄り添って生きるつもりでいる』という信仰をどれだけ確信しているだろうかと思わされている。他者に対する信じ合う、愛し合う、そんな日々の実践を歩ませていただけたらと思う」と述べた。
また祈祷会に集ったキリスト者らに対し、「神様に向かう愛、そこを源として与えられてくる、他者に対する信じ合うこと、愛し合うこと、あなたの家族やお友達と、出会う人々と共に寄り添って生きる、そういう生き様が、いつ何時でもイエス様とお会い出来る姿なのです。いつも喜び絶えず祈りすべての事を感謝しなさい(Ⅰテサロニケ5・16~18)という姿は、イエス様の再臨を待ち望む私達の本物の姿です。それにもかかわらず、いつも怒ったり愚痴をついたりしている姿はないでしょうか。私達の力ではどうすることもできないような時にでも、平和の神御自身があなたがたを全く聖なる者としてくださいます(Ⅰテサロニケ5・23)。被災地の方々が『忘れられていく』という事が一番不安なのです。あなたの側にいる方々が『無視されている』、『切り捨てられていく』という淋しさを感じている『無縁社会』において、必要とされているキリスト者は『あなた』ではないかと思っています。あなたのハート、魂の真実さが、あなたの家族や友達に表されていくこと、何も東日本の被災地だけではなく、東京の人にも、日本のすべての人々にクリスチャンが実践していくことができればと思います」と述べた。
淀橋教会主管牧師の峯野龍弘氏は「(被災地の)大多数の方がノンクリスチャンの方々によって占められていると思いますが、神様、それらのすべてを超えて一人ひとりの心にイエス様の愛が届き、その方々の心が慰められるように、助けて希望を与えてください。誰かが側にいて、その方々の心に本当に寄り添うことができることで、生きることをもう一度思い直すことができるように。少数の信徒、教会の先生方の存在を今こそお用いくださり、彼らを通して被災地の人々に主の愛、恵みが伝わりますように。最後の審判も見事に乗り越えることが出来る永遠のいのちを一人ひとりにお与え下さるように。祈る事を教えてください。祈りを聞いてください」と祈祷を捧げた。
祈祷会では、(1)苦悩する被災地の人々に、生きる目的と希望が具体的に与えられるように、(2)災害復興作業と復興計画が具体的に促進されるように、(3)生活基盤と雇用が確立し、生活保証と生活計画が確立されるように、(4)放射能汚染の不安と風評に苦しむ人々、子どもたちのため原発事故収束作業に携わっている人々のため、被災地教会・キリスト者の祝福と活躍のため、(6)政府・行政・所轄責任者の的確な対応と連携、原発・エネルギー行政の進展のため、(7)次回超教派一致祈祷会のためにそれぞれ祈りがなされた。
次回超教派一致祈祷会は8月11日午後4時半に淀橋教会東ロビーで行われ、日本バプテスト連盟蓮根バプテスト教会主任牧師の高木康俊氏が特別メッセージを伝える。祈祷会は誰でも参加可能となっている(自由献金あり)。