シリアでは昨年3月から反政府デモに対する弾圧で5400人以上が死亡している。その他数千人が行方不明となり、7万人近くの国民が一時的に非難せざるを得ない状況、2万5千人が暴力行為から逃れるために国外へ避難する状況となっている。
採択された決議案では「シリア当局による広範囲で構造的な人権と基本的自由を濫用する行為が継続して行われている」ことが非難された。シリアでは民間人に対する暴力、政権の自由裁量による死刑執行、反政府デモ参加者、ジャーナリスト、人権活動家、医師、子供などに対する殺害や抑圧、拷問、強姦行為が生じていることが非難された。決議案ではシリアが「迅速にすべての人権濫用行為、民間人への攻撃を止めること」が要求されている。国連総会の非難決議案には、安保理による決議案とは異なり拘束力はないが、国連加盟各国による強い警告がシリア政府に対し発せられることになった。
ナシル・アブドルアジズ・アルナセル国連総会議長と 潘基文(バン・キムン)国連事務総長は、それぞれの広報担当者を通じて決議案採択を歓迎する声明文を発表した。
アルナセル議長は決議案の採択について「世界中がシリア国民の安全や情勢について懸念していることを表しています。国連総会を通してシリア情勢安定のために加盟各国が進んで取り組んでいく姿勢を示すものとなりました。すべての平和を愛する国々はシリアの危機に関する緊急の解決法を見つけ、支持しようとしています。24日にはチュニジアでシリアを含む近隣諸国による会議も計画されています」と述べた。
潘基文事務総長は、国連総会の決議案採択について「シリアにおける民主主義、人権の保護、すべてのシリア国民の尊厳を伴う政治的解決と平和的な未来に向けた道が示されました。これまで待望されていたメッセージが採択されました。シリア当局は国際共同体による決議案に注意を払い、シリア国民の声に耳を傾けなければなりません」と述べた。
国連総会の決議案採択投票前に、シリア国連大使のバシャル・ジャファリ氏は、決議案の草案は「偏った文章であり、シリア情勢と何ら関係のないものである」と非難していた。ジャファリ氏は「シリア政府はすでに国民の要求に対応した進展を見せており、26日には新憲法策定のための国民投票を行い、全国レベルの対話を行う予定である」と述べた。またシリア国内の治安安定のために、武装勢力がシリア領土内で干渉することについては、強く反対し、「シリアの内政干渉や国内の火種をまき散らす行為を諸外国ヶ行う事を止めるように」訴えた。
4日の安全保障理事会では、ロシアと中国の拒否権発動により、シリア非難決議案が否決されていた。その後シリアのアサド政権による国民への弾圧が高まったのに伴い、シリア国民を保護する行動に出るべきであるという国連加盟各国の訴えを受け、国連総会の投票による採択がなされた。決議案では「シリア主導による暴力や恐怖を乗り越えた自由な環境下での政治的変遷を進める」ことについても呼びかけられている。