ルーテル世界連盟(LWF)と世界教会協議会(WCC)は、11月28日から12月10日まで、地球環境問題に対する聖書的見解と対話を促すため30人の青年たちを集め、聖書的視点に基づいた地球環境の正義について、集中訓練を行った。
9日まで南アフリカダーバンで開催されていた第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)と同時並行で2週間にわたってダーバンで開催されていた「生態系の正義」に関する政治学、神学トレーニングを受けた若者たちは、トレーニングを受け地球環境問題について新たな理解の下にイニシアチブを促進していこうとしている。
青年らは短期間の訓練を通じて、聖書的視点に基づいた地球環境の正義に関するアドボカシー、戦略的キャンペーンの展開、対話方法、生態系の正義のためのプロジェクト計画と実行方法などについて学んだ。訓練には聖公会、ルーテル教会、メソジスト教会、東方正教会、長老教会およびローマカトリック教会に属する青年クリスチャンらが共に参加した。
COP17と同時に行われた訓練を終え、参加した青年クリスチャンらは、今後の「環境問題の正義」に関してどのような将来的計画を立てていくかの枠組みをつかむことができるようになったことを証しした。
スウェーデンから訓練に参加したヨアキム・ブック・ジョンソンさん(20)は「スウェーデンのルーテル教会で40日のレント(受難節)の期間を通して自動車の運転、および二酸化炭素を排出する製品の使用を最小限に控える活動を行おうと思います。二酸化炭素排出量がこれ以上増えないように祈りと共に断食を行おうと思います」と述べた。これまで、レントの期間は神の御心を理解し、神の主権を自己の心の中で第一にもってくるために自己否定を行い、祈りに集中する期間であると理解してきたジョンソンさんは「二酸化炭素排出量削減のための断食は、(現代社会にあって)クリスチャンがレントの期間を過ごす適切な方法の一つと言えると思います。今後ブログやソーシャルメディアを通してこの方法を広めていければと思います」と述べている。
ハンガリーのルーテル教会から訓練に参加したビクトール・リズカさん(30)も、訓練を通じて、ハンガリーとその周辺地域の青年クリスチャンによる二酸化炭素削減運動の動機を得ることができたことを証しした。リズカさんは、芸術的才能の高い青年クリスチャンらによって、家屋の壁を用いてペインティングを行い、環境問題の正義について訴えていく活動を継続して行っていくという。
ベネズエラ長老教会から訓練に参加したレイミー・エスペラーザさん(24)は、ダーバンから帰国する途中で、来年ブラジルで開催される国連持続可能な開発会議(通称リオプラス20)に向けて母国の人々の環境問題に対する関心を高めるための計画を計画するつもりであるという。
オーストラリアの聖公会から参加したクレア・バレット・レナードさんは、母国の学校でフィリピンの水資源利用問題の正義について問題意識を提唱する活動を行っていく動機が高められたことを証しした。
2008年には韓国のルーテル教会が教会の女性信徒および青年信徒が教会の中の多様な分野の活動により深く関わることができるための戦略的な計画を適用した。今回の訓練に参加したLWFアジア地域バイスプレジデントでLWF役員会議会員のユンヘ・クォン氏は「人類と自然が和解し、教会と社会が転換して行く道を模索しています」と述べた。
南インドの教会から参加したジェヤティラカ・プラサバンさんは、インド社会に存在している不可触民の社会に希望をもたらすために、エコ神学の概念を同地域で継続的に広めていきたいとの思いを強め、「カースト制によって不可触民と呼ばれる人たちは自由に外を歩くこともできず、水を汲んできたり、家畜に餌をあげることも自由にできない状態にあります」と述べた。プラサバンさんらは南インドの青年クリスチャンによる不可触民の権利を守るフォーラムを組織し、「上位のカーストにある人たちに、不可触民の人たちが自由に水を得る権利が得られるように訴えようと思っています」と述べた。他にもインドの農村でリソースセンターを設置し、農業活動の改善法や環境汚染を防ぐためのリサーチ活動を行うことも計画しているという。
LWF青年部長のロジャー・シュミト氏は、「このような草の根レベルのイニシアチブが地球環境問題や人々が日々直面する不正を改善し、新たな次元に転換していくための大きな役割を果たす」とし、「ダーバンで開催されたCOP17の成果は失望させられるものであり、地球という惑星を救い、人類の必要を満たすための具体的行動の策定に欠けたものとなってしまいました。しかし(ダーバンでの会議と同時期に同じ場所で)青年たちが生態系の正義のための訓練を受けることで、彼らの所属する諸教会において希望の種を蒔くことができました」と述べている。
WCCによると、これらの草の根活動とともに、諸教会が継続してグローバルな生態系が直面する問題に対する具体的行動を取っていくための倫理的な義務の策定、合意に向けて取り組んでいく予定であるという。