特定の季節だけ働き過ぎることはあるでしょうが、そのような働き過ぎのワークスタイルは長くは続きません。働き過ぎの状態を継続することで、最終的に生活の破たんをきたすことになります。
私が出版事業でキャリアを積み出したとき、『この事業で成功する』と心に決めていました。しかし私の心の一部分は「恐れ」の感情が占めていました。この業界で何の経験もなく、私自身の欠陥を見破られるのではないかと死ぬほど恐れていました。
一方で、私の中には成功したいという欲望があり、その欲望に駆り立てられていました。自分の「長所発見テスト」を受けたとき、私の最高の強みは、私自身の性格が「達成者」の性格を持っていることにあるという結果が出てきました。その結果、自分の強みである性格を活かして、企業の中でより上の役職に昇進できるように黙々と努力することを愛するようになりました。
このようなことをしていた私のキャリア形成の初期段階において、私はいつも朝5時に会社に到着し、夕方6時を過ぎても会社で残業する毎日が続いていました。昼食時もデスクで昼食をとっていましたから、一日13時間もオフィスのデスクの前に座ってぶっ通しで仕事に明け暮れる毎日が続いていました。さらに土曜日にもオフィスに行き、休日出勤して仕事をしていました。実に毎週70時間も仕事をする毎日を送っていました。
妻のゲイルは私の多忙さを理解してくれましたが、当時私たちの抱えていた小さな子どもたちにとっては、私が仕事で相手をしてあげられない代わりとなるものを深刻に必要としていました。そのことで既婚者カウンセリングを受けたところ、私の仕事と家庭生活の両立のバランスはまったく取れていなかったことが明らかになりました。当然このようなライフスタイルは長期間継続するものとはなり得ませんでした。
あなたももし一週間に55時間以上働いておられるのだとすれば、仕事と生活のバランスを崩していることが考えられます。そのことで5つの重要な人生の宝物を犠牲にする危機に直面しているといえるかもしれません。
1.あなたの健康
私のキャリア形成初期の段階においては、ジャンクフードを適当に食べて運動しなくても生きていけると思っていました。しかしそのような生活を続けていると、やがてはそのツケがきます。皆さんの知っている人たちの中でも、若いうちにあまりに熱心に働きすぎて、自分自身へのケアをしなかったために若くして亡くなられた方々が思い当たるのではないでしょうか?
2.あなたの家族
妻の理解を得られなければ離婚問題が生じてきますが、妻子を扶養する父親が離婚するには莫大なお金がかかります。また子どもの親権の問題もあります。子どもが幼いときに家庭のために時間を費やさないのであれば、子どもが成長してから子どもの非行の問題などでその時に家庭に時間をかけなかったことの代償をしなければならなくなるかもしれません。
3.あなたの友人
悲しい事に、私は5年前まで親しい友達が本当に誰もいませんでした。仕事の同僚と教会で接する兄弟姉妹が周囲にいれば十分と思っていました。現在では世の中というものが私にとって本当に意味を成すと思える数人のとてもすばらしい友人を得ています。このような親友関係を築く時間に自分の人生の時間の一部を投資するべきです。
4.あなた自身の発する効果
あなたがリラックスして働いているときに、もっとも生産効率の良い仕事ができると思います。仕事はゴルフや他のスポーツに例える事もできると思います。熱心にがむしゃらに働けば働くほど、あなたの仕事の結果出される効果は薄まっていくものです。ストレスのない環境にあるとき、最も生産的な仕事をすることができます。効果的な仕事と実際に仕事する時間の相関性はほとんどゼロに等しいのです。
5.あなたの行動そのもの
あなたの周りにいる人たちが、無意識のうちにあなたの行動を真似るようになります。それを食い止めることはできません。そのためあなたが組織の指導者なのであれば、仕事のペースを定めなければなりません。一週間に70時間も働いていると、あなたに従う人々も同様に一週間に70時間働かなければならないと思ってしまいます。そしてそのように働くことで、部下たちに負担をかけてしまいます。その負担によって生じた責任をあなたが取らなくてはならなくなってしまいます。
現在の私は仕事と生活の境界線をはっきりと分けることができるようになりました。一週間に50時間までしか仕事しないようにすることにしました。人生で本当に大切なものを失わないために、あなたの人生で本当に大切だと思われる事柄に人生の時間を投資していくことで、仕事と生活のバランスを取り戻すことが大切です。
(本コラムは米クリスチャンポストから翻訳しています)
トーマス・ネルソン 会長(前CEO) マイケル・ハイアット氏
トーマス・ネルソンは世界最大のキリスト教書籍出版会社である。米国内では書籍出版貿易で第7位となっている。同氏のブログ(http://michaelhyatt.com)では、指導者として必要な福音的思考法やウェブサイトによる効果的なビジネス法、出版業界に関するトレンドなどを紹介している。